治療までの思考プロセス「SOAP」
診断プロセス「SOAP」を活用し、正確な治療へ
当院での診察は、SOAPと呼ばれる問題指向型のシステムを取り入れています。
診察、検査を経て診断、治療に至るまで大変有益な方法です。この方法ではまず問題点を列挙し、それぞれの問題について記録内容を以下の4項目に分類します。
S (Subject):主観的データ。飼い主様の訴え、病歴、患畜の様子など。
O (Object):客観的データ。診察所見、検査所見など。
A (Assessment):上2つの情報の評価。
P (Plan):上記3つをもとにした診断プランや治療方針。
S、Oで見つけた問題を列挙した一覧をProblem Listと言い、それを元にAで考えられる類症鑑別(Differential Diagnosis)を挙げていきます。それら類症鑑別(※)で挙がった病気を区別していくための方法をPで挙げていきます。このPには、診断に必要な検査、さらなる治療も含まれます。この周期を回す事により正確な診断ができます。
このSOAPの考えに則って診察を進めることで、論理的かつ合理的に鑑別を考慮することが可能となり、治療までの一貫した道筋を立てることに繋がります。必要な検査についても合理的な判断のもと判断ができるようになるため、当院では「とりあえず検査」ということは行いません。疑っているものがある(もしくは鑑別から外す)からこそ、検査を行うのです。
(※)類症鑑別とは?
SとOから問題点を挙げたときに、その問題点からAの評価の段階で、推測される類症鑑別を出さないといけません。類症鑑別を挙げていくプロセスは大変です。それは、取りこぼしがあってはいけないからです。その手法の一つに、DAMN IT(こんちくしょうと言う意味の言葉)を参考にして検出する方法があります。この頭文字から以下の様な状況を考えて類症鑑別を出していくのです。
D:Degenerative(変性性)
A:Anomalous(奇形性、先天性)
M:Malfunction (機能不全)、Metabolic(代謝性)
N:Neurologic (神経性)、Neoplastic(腫瘍)
I:Inflammatory(炎症性)、Infectious(感染性)
T:Traumatic(外傷性)
一つ一つ問題点とこのDAMN ITを合わせて考えて、出した類症鑑別のリストから次の段階であるPのプランをつくっていきます。
獣医師の力量はSOAPで測られる
論理的思考は診断をしていく上での武器です。的確な診断なくして、治療はありません。ただ、ここで間違ってはいけないのが、単にレントゲン検査をした、CT検査をしただけで結果が出るわけではないのです。例えば野球やゴルフで言えば、プロと同じ道具を持っていれば、そしてそれを使用すれば、プロと同じようなプレイやスコアが出せるのでしょうか?そうではないですね。これは診療も全く同じです。レントゲンも超音波も診れる人が操作して診ないと何にもならないのです。検査を行っただけで結果が出るわけではありません。
当院では、最先端の検査機器、レントゲン、超音波、CT、内視鏡、血液検査機器、炎症反応、凝固系検査機器など、沢山の機器をそろえているのと同時に、それぞれの機器を扱う獣医師に最大限の教育をしています。学会や講習会などに参加すると共に、スペシャリストを月に数日病院に招聘することで、その技術と能力を常に最先端に保つ様にしています。
まず診断までの考え方(SOAP)を習得し、そしてその武器である診断機器を最高の技術で扱って診断まで持っていきます。これで治療は決まりますので、ここまでをしっかり訓練することがまず大切であり、病院としての要です。決して、器械が沢山あるという事が大切なのではないのです。
SOAPは一生使える考え方になる
- やり方を学ぶ
- 誰かの知識を学ぶ
- 考え方を学ぶ
私たちが「学ぶ」方法には、大きく分けると3つあります。
このうち、SOAPを学ぶことは、3番目の「考え方を学ぶ」ことに繋がります。
それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
1→3に移るにつれ、上級な「学び」となります。
1.やり方を学ぶ | 2.誰かの知識を学ぶ | 3.考え方を学ぶ | |
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学ぶ方について |
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メリット |
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デメリット |
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