麻酔と外科へのこだわり

麻酔へのこだわり

麻酔は全ての手術の基本です。
例えば、歯科手術や避妊・去勢手術といった基本的な手術から高度な手術に至るまで、あらゆる手術で麻酔が使用されます。

言葉を話せない動物たちが、飼い主様の手元を離れて手術を受け覚醒するわけですから、麻酔の上手下手というのはなかなか評価されにくい部分があります。しかしながら、麻酔の方法、疼痛管理方法によって、明らかに動物たちの表情は変わってきます。

麻酔技術を高めるのは、麻酔深度(麻酔の深さ)が動物に苦痛を与えることが無いようにするためです。整形外科、開胸手術など痛みを伴う手術や、肝臓、胆のうなどのリスクを伴う手術を毎年何百とこなしてきている当院ならではの麻酔技術を駆使し、もう麻酔は無理といわれた症例に対しても、QOL向上のために歯科処置を行ったこともあります。20歳を超えた犬も、歯科処置後から「ボール遊びをするようになった」と喜ばれたこともあります。

当院では、人医療でも多く使用されているドイツのドレーゲル社の全身麻酔装置Drager Fabius Trioを導入し、安全な麻酔管理を行っています。これは通常人間の大学病院の一般外科に使用されているモデルと同等です。(当院では、人工呼吸器付きの麻酔器が4台ございます)

麻酔・疼痛管理科

外科へのこだわり

当院では先代の院長時代より外科手術には自信と実績があります。
初代院長は1960年代当時としては大変珍しかった海外研修を行い、獣医療先進国のアメリカ、ニューヨーク市のアニマルメディカルセンターでの海外研修に参加しました。そこで学んだ知識をもとに、後のフィラリアの感染症の病態の一つである「後大静脈塞栓症の発見」と手術手技の発明である「頸静脈吊り出し方」を考案し、今では世界標準の手術になっています。
現院長も外科に力を入れており、2013年には犬の膝の手術が獣医界で最も権威のあるアメリカの外科専門医の雑誌に掲載され新たな手術方法の開発が認められました。これまで培った歴史・技術を生かすには、その歴史に甘んじず、常に進歩し続ける姿勢が必要だと強く感じています。
さて、ここで当院の外科手術の現場をご紹介します。
当院では外科手術を3つの手術室に分けて行っています。その理由と各部屋の説明をします。

外科へのこだわり

第一の手術室

メインの手術室、第一の手術室です。避妊、去勢手術をはじめ、開腹手術をしたり、整形外科の手術をしたり、細菌が入り込まない様に手術をしないといけない場合に使用します。この部屋の環境は、ホコリやチリがたまる事がないように壁などに棚や荷物を置く場所はありません。換気は高性能へパフィルターを通した空気を常に手術室内で排出しており、手術室内は外部より空気が入り込めない陽圧に保たれている部屋になっています。これにより手術室側から常に風が外部に向かって出ている状態になりますから、ホコリなどが手術室に入ってこないようになります。

第一の手術室

第二の手術室

第二の手術室は、麻酔をし、胃カメラや直腸鏡の検査をするときに使う手術室です。どうして、胃カメラを普通の手術室で行ってはいけないのかと言うと、胃の中や腸のなかには沢山の細菌がいて、これらの手術をここで行うと、その後にお腹を開ける手術ができなくなってしまうからです。当院が手術中の感染がないのはこういった努力によるものです。ここは、麻酔の導入や毛刈りの時にも使われます。

麻酔導入

麻酔導入

内視鏡

内視鏡

第三の手術室

第三の手術室は、歯石処置専用の手術室です。歯石は細菌の巣窟と言われていて、我々も処置をするときにはしっかりと帽子とマスクを装着します。これは手術の時のマスクとは違い、我々が細菌を吸い込まない様にするために装着します。第一の手術室ではマスクは我々から細菌を出さないようにするための物でしたが、ここでは全く逆です。また、歯のレントゲンを撮らないと処置は出来ないことが多いので、レントゲンを漏らすことのないように、壁にすべて鉛を入れています。ここでレントゲンを撮り、その結果から、さらにCT検査など必要な場合には、その場で撮影し、病変部の歯の処置を行い、スケーリング(歯石除去)を実施して、二段階の研磨をして、歯を綺麗にしていきます。この部屋は特に細菌が飛び散るために、第一と第二の手術室とは階も変えています。

第三の手術室

歯石室

手術時の服装

獣医師が手術室に入るときも診察をするときの服装からスクラブという外科専用の下着に着替えます。帽子、マスクも当然付けて入らないといけません。靴も履き替え、さらに手術室の前には、靴裏のゴミを吸着するシートを踏んで入ります。動物もこの部屋に入る前に、すべての毛刈りを終えてから移動します。

手術用スクラブ            

診察時の服装

手術時の服装            

手術時のスクラブと手術着

必ず3人の獣医師で手術

避妊手術、去勢手術は簡単な手術と感じている飼い主様がいらっしゃるかもしれませんが、当院は、必ず3人以上の獣医師で手術をします。一人は術者、一人は手術助手そして麻酔医の3人です。避妊、去勢と言えども、どんな手術にも最低限の人数として3人の獣医師が参加します。当然のことながら術者、助手全てが、全身に無菌のガウンを着て行います。手術時に使用する糸もすべて組織に吸収される素材のものを使用します。この糸は普通の糸よりも高価ですが、多少値段が高くとも、最も良いとされる糸を使うのは動物のことを考えてのことです。常にどんな医療に対しても最先端の治療法を用意するのが当院の役目です。

必ず3人の獣医師で手術

高齢犬の手術

動物の高齢化が話題になることも多くなってきました。病気が診断されると、治療は決まりますが、考えられる治療は一つではありません。当院では、その状況に応じて、最善の治療を選択したいと考えています。若い年齢の動物なら、どんな治療も耐えられますが、老齢の動物や疾患を持った動物はそうではありません。その後の生活ができ、快適な生活を送ってもらうための最善の治療を考えて手術をするべきです。例えば、麻酔は30分ぐらいしかかけられない。手術をしないという治療も考えられるが、その選択肢では、その後の生活に課題が残る。そういった課題の中、どういった手術をするのかが、この治療の鍵を握ります。このように、当院ではあらゆる状況を考え、高齢犬の手術にも力を入れてきています。セカンドオピニオンでの来院も増えてきています。

当院の治療例