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2006年06月01日

(論文)雌犬の膀胱結石に対する結石破砕用鉗子を用いた経尿道的結石摘出方法の検討

雌犬の膀胱結石に対する結石破砕用鉗子を用いた経尿道的結石摘出方法の検討

著者名:藤井康一、山下博史
学術雑誌名:獣医麻酔外科誌 Vol.36,No.4,97-101
発刊年月:2005年
獣医麻酔外科学会:優秀論文賞

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1、現状の課題
膀胱結石症は比較的多く直面する外科疾患。内科療法、食餌療法を実施しても治療効果があがらず再発を繰り返す症例は少なくない。そういった症例に対し外科処置を繰り返すことは生体にとって好ましいことではない。

2、藤井動物病院のオリジナルの考案
経尿道的膀胱結石破砕摘出術
膀胱結石症に対して外科処理・感染治療・食事療法を行っているにもかかわらず再発を繰り返している雌犬の症例に対し、麻酔下にて開腹せず経尿道的に結石を破砕し回収する方法を検討し、短期間にて結石を完全に回収することができ、良好な成績を収めることができた。

3、主な処置用器具


本処置に用いた器具一覧
1. 結石破砕用鉗子、2,3. 光学視管用シースと内筒、4,5. 洗浄用ステンレス管及びガイド、4,6,7. 破砕結石回収用スポイトセット

結石破砕用鉗子先端
鉗子先端は鋸歯状にすることにより結石を保持しやすくし、先端中央部のスパイク(矢印)にて結石にひびを入れ、破砕しやすくした。

4、本研究の成果
経尿道的膀胱結石破砕摘出術は(膀胱結石最大2cm 以下)約30 分の麻酔処置によりすべての処置を完了。
術後のX 線写真によりすべての結石を回収できた。(※X 線写真を入れる)
通常の膀胱結石摘出術により短時間で処置が完了し、当日に帰宅させることが可能だった
術後合併症について、本法では開腹する必要がないため、犬に対する外科的侵襲はかなり低かった。
※侵襲は数時間から半日のみ血尿が見られたのみで、翌日には肉眼的に血尿は認められなくなった。

5、本研究の考察
本法は犬に対する侵襲が非常に少なく麻酔時間の短縮が期待されるなどの利点を有しており、雌犬の膀胱結石摘出術を行う場合の選択肢の一つになり得る有効な処置法だと考える。


 

ひとこと
この手術は雌犬で小型の犬に限るのですが、膀胱結石を繰り返す犬、多い犬では手術8回という子がいましたが、いい加減手術は可哀想だし、でも結石を残しておくのも頻尿が続き可哀想だという事で考案した方法です。雄の場合はおちんちんに骨があるので、尿道が太くないためできませんが、雌犬は方法により手術を免れた犬が沢山います。