Fujii Times(ブログ)

2017年05月07日

海外からも評価された45年前の学会発表

総務スタッフです。

先日のブログ「フィラリア症の予防シーズン」で1960年代、1970年代においてフィラリア症についての初代院長の藤井勇が診断や手術方法について学会発表していたことを簡単に触れさせてもらいました。

その頃の様子がわかるものがネットに掲載されていないかと個人的に調べていたところ、1つ見つけることができました。1972年(昭和47年)に開催された第183回日本臨床獣医学会(小動物)においての学会講演要旨「犬糸状虫の後大静脈塞栓症の外科手術法について」の講演資料です。

この資料によれば

・犬糸状虫による後大静脈の狭窄および塞栓を伴う患犬が多くみられ、その予後は極めて不良。

・この診断ならびに外科的治療法について日獣会誌(1968年)第143回ならびに第151回日本臨床獣医学会にて報告

・これまでの報告ではその臨床診断が困難、また外科手術法についても開胸下で行うため、重症な症例では麻酔や手術などの浸襲に対して危険を伴う

・これらの課題をもとに、外科的手術法を根本的に考え直し、従来の開胸手術によらず頸静脈から糸状吊り出し鉗子を挿入して、右心房内および後大静脈に塞栓している犬糸状虫を摘出する方法を考案、実際の臨床例に応用した結果、極めて良好な成績が得られ、同時に本方法が安全で実用性があり、一般の臨床に広く活用し得ることが確認された

とあります。このことにより、従来の全身麻酔を局所麻酔にできたこと。皮膚切開も従来の開胸手術と比較して小範囲で済むようになったことなどが挙げられています。

私が個人的に最も感心したのは、その手術を実現するために頸静脈から後大静脈まで到達させるための鉗子を改良していることです。

常々、現院長の藤井康一が「学会発表も自分だけができる手術では意味がない。自分以外の多くの獣医師でもできることが大切」と言います。その話を45年前のこの発表に置き換えれば、この鉗子の改良で多くの獣医師がこの手術ができるようになったと想像できます。

なお、この鉗子を用いた頸静脈からの摘出法は、海外でも高い評価(※)を得ていたと犬糸状虫症研究の歴史的概観(大石勇,2001)でも書かれています。

(※本文抜粋)『大静脈症候群(caval sybdrome)の治療を目的とした藤井勇(1975)の直鉗子を用いた頸静脈からの虫摘出法でがある。この方法はJackson,R.F.et al(1977)も高く評価している』

現在、フィラリア症は、薬で予防が徹底されていますが、こういった歴史を重ね今日があることを強く心に感じました。

◎当院では、「春の健診キャンペーン」を4月に引き続き実施中です。全身の血液健診とフィラリアの抗原検査をセット価格で行うことができます。さらに、推奨予防期間分のフィラリアやノミ・ダニ駆虫薬をまとめてご購入いただいた方には、特典もあります。キャンペーン期間は5月31日まで。ぜひこの機会にご利用ください。