胆嚢の病気

胆嚢の病気について

動物が長生きすることでホルモンバランスを崩したり、食餌の偏りによって、胆嚢の病気が増えてきています。高脂血症や肝臓の検査数値が高いといわれたことのある子は、とても多いと思います。

中年から高年期の犬を飼っている方は、動物病院で高脂血症もしくは肝臓や胆嚢が悪いと言われたことがありませんか?一度でも言われたなら、ホルモン検査や超音波検査を受けていただき、「なぜ、そしてどのくらい悪いのか?」その理由や原因をつきとめて、改善できるもの、もしくは治療可能なものなら、早めに治療をすることをお勧めします。

胆嚢の疾患は、しっかりとした診断と適切な処置をしないと、命に関わる病気です。多くの子がこの病気を抱えていますが、「様子を見ましょう。」という獣医師の言葉に楽観的に考えてしまいがちな病です。

それは無症状の子が多いからです。もし獣医師に様子を見ましょうと言われても3ヶ月に1回は超音波検査を受け、悪い方向への変化の場合は適切な処置をしましょう。

現在では麻酔や手術器具の進歩から、破裂などをした緊急の胆嚢切除でなければ、それほどの時間もかからずに、2,3日の入院で退院できる子が多いですから、病態の悪さを早期に発見して、早期に治療をすることが大切です。

状況が進んでいない場合は、人間の生活習慣病の様な形で食事や運動の生活習慣を改善することで治る場合もありますので、しっかりとした診断が大切です。

診断で重要なのは腹部の超音波検査です。最新の超音波は画像がかなり良くなり、初期の粘液嚢腫をしっかりと診断ができます。

胆嚢炎

胆嚢炎は文字通り胆嚢に炎症が起こります。細菌感染などが原因のことも多いですので、急激に症状が出ます。嘔吐、下痢、食欲廃絶、沈鬱さらには黄疸が出るとさらに症状は悪化します。超音波検査では、胆嚢壁の浮腫や炎症がみられます。同時に胆嚢壁が破裂していないかも診る必要があります。胆嚢破裂が無い場合は、内科治療で治療することが多いです。内科治療で効果がみられれば、そのまま継続をして治癒させますが、効果がない時には外科的処置として胆嚢切除も考慮しておかなければいけません。かなり症状が強く出る子は、判断が遅いと救命率が下がることもあります。

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢の病気の中で、特に注意しなければいけないのが胆嚢粘液嚢腫です。
症状などが全くなくても進行してしまっていることがあります。胆嚢粘液嚢腫は、腹部超音波検査の検診で突然発見されることも少なくありません。しかしながら、内科的な治療では治療は難しく余命も外科処置に比べて優位に短くなるのが現実です。そのため、発見された場合は早めに外科的切除を行うことが大切です。

胆嚢粘液嚢腫の手術は、胆嚢破裂などの合併症がなければ胆嚢切除だけで済みますので、1時間程度で終わります。無症状で発見された場合は術後の経過や入院期間も数日と早く、将来的に問題を起こすことはあまりありません。しかしながら高齢な子も多いため、手術には万全の体制を整えて臨むことが大切です。

もしすでに胆嚢破裂、胆嚢閉塞などの症状で食欲不振や重度の症状が出ている場合は緊急手術になり、手術中の危険性も高まります。そのためなるべく無症状の時期に発見して、早期に手術をすることが一番の方法です。胆嚢が悪いといわれたら、的確な超音波検査に診察が必要です。この検査で見落としをしないことが早期発見早期治療につながります。

原因

胆嚢粘液嚢腫は胆嚢内にムチンを含有する胆汁が蓄積し、その結果として胆汁のうっ滞を引き起こします。現在までのところ犬における胆嚢粘液嚢腫の病因は不明で、体質、遺伝、食生活など含めた複数の原因が関係している可能性が高いと思われます。

今のところ胆嚢の動き、胆汁の流れ、さらには組成の変化が関係していると思われます。この病気は、藤井院長がアメリカで研修をしていた1990年初頭では、米国では何度か症例を経験しましたが、当時日本では診たことがありませんでした。その後少しして胆嚢粘液嚢腫が多くなってきたと思います。ドックフードの変化に伴う食生活の変化が原因ではと一時期言われていたこともありました。

原因は不明とお伝えしましたが、考えられる要因として、胆嚢の収縮力の低下、胆汁の流量の減少による胆嚢の水分調節の変化が考えられています。しかしながら単純にそれだけではすべての犬が胆嚢粘液嚢腫に罹患するとは言えません。例えば「胆泥症」と獣医師に言われたとしても、それが胆嚢粘液嚢腫になるということではないのです。

胆嚢粘液嚢腫は胆嚢内で胆嚢壁から粘液が過剰に分泌され、胆嚢内に濃いゼラチン状の胆汁が蓄積されます。数週間から数ヶ月の間に粘度が上昇し、最終的には胆嚢の内腔全体を厚いゼラチン状の物質が占めるようになります。これを胆嚢粘液嚢腫と診断します。胆嚢の中は黒色のゼリーの様で弾力性があり、流れ出るというより絞りだすもしくはスプーンで掻きだし、剝がしとる感じです。

この疾患にかかるリスクを上げる要因として、下記が挙げられます。

  • クッシング病(副腎皮質機能亢進症)の罹患:リスクが29倍になるという報告があります。
  • 甲状腺機能低下症
  • 炎症性腸疾患(IBD)
  • シェットランド・シープドッグ(遺伝的要因)

症状

先ほども述べましたように、胆嚢粘液嚢腫の臨床症状は無症状のものから非特異的なものまで多く、健康診断等の腹部超音波検査で偶然発見されることもしばしばあります。特に挙げるとすれば、以下の様な症状が出ます。
元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、粘膜の黄疸、腹痛、腹部の張りなど。
症状が出た時には、既に緊急や重症のことがよくあります。

診断方法

胆嚢粘液嚢腫の診断は、身体検査と血液検査、そして腹部超音波検査の画像診断に頼って行われます。特に腹部超音波検査は、病気の初期段階で非常に有効です。そのため食欲不振や嘔吐などの症状が現れた時には、一度は腹部超音波検査をして胆嚢の検査をしておくことが大切です。胆嚢粘液嚢腫の症例ですでに重い症状で来院した子の多くは、こういった検査時にすでに胆嚢破裂を起こしています。早期発見により死亡のリスクを下げますので、定期検診を忘れずに行いましょう。

胆嚢粘液嚢腫が進行するとゼラチン状物質が胆管にまでおよび、胆管閉塞して生命の危険にさらされたり、胆嚢壁の炎症性変化により胆嚢が破裂して、胆汁内容物が腹部に流出することもあります。内科療法は常にリスクを背負って生きていかなければなりません。

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胆嚢粘液嚢腫1

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胆嚢粘液嚢腫2

治療方法

胆嚢粘液嚢腫の犬には第一に外科治療が推奨されます。超音波検査で発見されたら胆嚢摘出術を行うことが第一選択です。最近のデータでは、内科療法をしている犬より外科療法を実施したこの方が優位に長生きだったことと、内科療法をしていた犬も結果的に外科手術を受ける結果(胆嚢破裂、胆嚢炎など)になることが多いということです。こういった重篤な状態になったり、胆嚢が破裂するまで胆嚢摘出を遅らせることは、生命を脅かすことに他なりません。

粘液嚢腫と診断がついた場合、外科的に胆嚢を切除することが長生きをさせられます。ある報告では手術した症例の犬の生存中央期間は約5年ですが、内科療法で手術をしないと3年半程度と寿命が大きく変わってきます。そのため粘液嚢腫は年齢が15歳以上の高齢でなければ、手術をする方が長生きできます。

特に無症状の胆嚢粘液嚢腫の胆嚢切除をすることはリスクを下げ、手術時間を短くし、さらに回復も早くなります。確かに他の外科手術と同様に全身麻酔にはリスクが伴うことはありますが、早期に手術を実施する方が麻酔のリスクを気にするより確実に治癒に近づきます。

予後

症状が重い状態で手術した動物は手術のリスクは高まりますが、手術後に合併症等がなければ、長期間にわたり問題なく過ごせることが多いです。

胆泥症

腹部超音波検査をすると見られる、胆嚢内に通常の胆汁より白く描出される粘稠性の高い泥状のものを胆泥と呼びます。ほぼ無症状のことが多く、病気と判断するよりは胆嚢の動きが悪くなり少し胆汁の循環が悪化している状況ともいえるでしょう。

重力方向にたまりますので、流動性があります。多くの場合臨床症状はともなわないことが多く、無処置の場合もあります。しかしながら肝臓の数値が高い動物、重力方向に動かなくなるなど粘稠性が増す場合は、胆嚢から胆汁の排出を活発にする薬や、肝臓の薬を飲むことで経過を見ていきます。同時に腹部超音波検査により、胆石、胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫などの可能性を診断することも大切です。

胆汁の循環を良くする薬や、流れをスムーズにするような薬で改善することがあります。内科療法と食事管理などで、消えてしまう子も多いですが、消えずに変わらない子は経過観察が必要です。

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胆泥症軽度

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胆泥症重度

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胆泥症重度2

胆管閉塞(肝外)

一般に胆汁は肝臓から肝臓内の肝内胆管を通り、総胆管につながり、十二指腸に排出路があります。胆嚢は肝臓と総胆管の間にあり、空腹時は胆嚢の中に胆汁を蓄えておき、食餌をすると消化のために袋を絞り胆汁を総胆管から十二指腸に排出する機能があります。

この経路が胆嚢粘液嚢腫、胆嚢や胆管腫瘍、胆石、膵炎、膵臓の腫瘍などにより閉塞して、胆汁が十二指腸に流れなくなることを胆管閉塞と呼びます。こうなると胆嚢は胆汁のうっ滞により拡張し、ひどいときには胆嚢や胆管の破裂を起こします。

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胆嚢

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胆嚢結石

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膵炎

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膵炎2

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膵炎3

症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹部痛、粘膜の黄疸などの症状が出ます。症状には個体差があり、食欲不振程度の症状の動物やショック状態のように虚脱する動物もいて様々です。

診断方法

血液生化学検査、尿検査、X線検査、腹部超音波検査等で閉塞を確認すること、そして閉塞の原因を特定することがもっとも大切です。

治療方法

胆管閉塞は閉塞の原因によって治療法は異なります。閉塞や狭窄が胆管や膵臓の炎症によるものなら、内科治療で落ち着いてしまう動物もいますが、胆石や腫瘍などによる閉塞の場合は早期に外科処置が必要です。外科治療の目的は閉塞の解除ですが、胆石がどうしても動かない、取り除けない、腫瘍があり再開通できない場合などはあらゆる手術方法を用いて、胆汁を腸に流す方法を考えて処置します。

予後

原因により様々です。腫瘍以外の症例では、内科療法、外科療法を含め一度症状が落ち着いて治癒してしまえば、通常の生活に戻れます。

胆嚢破裂

胆嚢破裂は胆嚢の閉塞などに続発して起こる疾患です。胆嚢がおなかの中で破裂することにより、胆汁成分の腹腔内への流出による胆汁性腹膜炎を生じます。特に胆石症、胆嚢粘液嚢腫を持病に持っている動物によく見られます。

症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹痛、腹部膨満、発熱、黄疸など。

診断方法

血液生化学検査、尿検査を実施します。血液検査で肝臓の数値、血中ビリルビン値、白血球数、炎症反応(CRP)の上昇が見られます。また尿色も黄色になり、ビリルビン値の上昇が見られます。腹部超音波検査で胆嚢の破裂の所見を確認することや、腹膜炎の症状を見逃さないことが大切です。腹水が溜まっている場合は腹水を少量取り、胆汁漏出の診断をします。

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胆嚢粘液嚢腫破裂

治療方法

緊急の外科手術が必要です。夜間の場合は夜間救急での手術実施になることもあります。しかしながら、動物がどのような状態であるかがとても大切です。ショック状態でぐったりしている場合、手術はかえって危険です。動物の状態を手術できるところまで安定させて、手術開始になります。破裂した場所などにより手術方法は変わりますが、すべての状況に対応できるように準備して手術を行います。

予後

胆汁による腹膜炎が重度の場合は、予後が悪いことが多いです。腹膜炎は、感染なども含めて生存率を左右します。術後を乗り切ることができれば、通常の生活に戻れることが多いです。

胆石症(肝外)

胆石症も無症状でレントゲンや腹部超音波で見つかることもあります。しかしながら胆石症は、胆嚢から総胆管という腸につながる太いパイプに引っかかってしまうと重篤な症状を現します。当然のことながら強い痛みと、胆汁が流れないことで起こる黄疸が起こります。

症状としては食欲不振、嘔吐、沈鬱、脱水そして粘膜の黄疸がみられます。こういった症状が出たら、胆石が流れるか?胆嚢破裂しているか?など細かい検査をして、必要に応じて手術をします。多くの症例で、胆嚢破裂をしてから病院で胆石を発見することが多いです。飼主さんがあらかじめ胆石症を知っていれば、それほど慌てずの緊急手術にはならなかったという症例が多いです。

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