犬の歯石除去
毎日の歯磨きで愛犬も健康に
みなさん、毎日愛犬の歯を磨いていますか?歯を磨かないままでいると歯に歯垢が溜まり、その後歯石に変化してどんどんと付着してしまいます。歯石が付着したままだとどうなるでしょうか。歯肉は炎症を起こし、顔が腫れたり、歯槽膿漏や口臭が発生、中には歯の根っこが溶けて歯が抜けてしまう事もあります。歯に痛みが出ると元気や食欲が低下する子もいます。
また歯石は細菌の塊であり、その細菌を含んだ唾液を毎日飲み続けることで心臓や肝臓までも悪くしてしまうと言われています。歯磨きを習慣づけて行えば、歯石の付着を予防できます。
犬の予防歯科や歯周病の検査・治療は、技術と歯科の設備が充実している動物病院で行うことをお勧めします。お気軽に当院獣医師にご相談ください。
歯石が付いているのと付いていないのでは寿命が約15%(約2年)違うと言われています。
歯石除去について
歯石除去のすすめ
もうすでに付いてしまった歯石はどうしたら良いのでしょうか。付着した歯石をご自宅で取るのはとても難しいです。歯ブラシなどで磨いても、歯垢は取れますが歯石は取れません。当院では歯科器具を使用して全身麻酔下で歯石を取る処置を行っています。
歯石除去処置とは
全身麻酔下にて超音波スケーラーや研磨機を使用して歯石を除去することです。
午前中にお預かりし、お昼に処置を行い、当日の夕方に退院となります。
1.口腔内精査
歯石、歯肉炎、歯周病の進行程度および腫瘤などの病変がないか全体的に観察。
2.スケーリング
超音波スケーラーにて、歯の表側、裏側、歯間を丁寧に磨きます。
3.抜歯
動揺している歯や破折している歯など温存が難しい歯があれば、抜歯します。
4.ルートプレーニングおよびキュレッタージ
歯周ポケット内(歯根膜、歯肉縁)を掃除します。
5.ポリッシング
歯の表面を研磨し、歯垢を沈着しにくくします。
6.洗浄
口腔内、歯周ポケットなど全体的に洗浄します。
7. 記録
残っている歯、抜歯した歯、歯周ポケットの深さなどを記録します。
当院の歯科処置設備
診察機器
歯科レントゲン検査
通常のレントゲン撮影だと、歯の一本一本の撮影を行うことができないため、それぞれの歯根を評価することは非常に難しいです。 当院では歯科用レントゲン装置を使用することにより、歯の個別の撮影が可能になり、より詳細な評価を行うことが可能になりました。 また、フィルムレスのレントゲン装置の為、処理が早く麻酔時間の短縮にもつながります。
小型CT撮影装置
わずか18秒で頭部のCT画像を撮影できる機械です。歯周病が重度である症例に関しては、歯を1本ずつX線撮影し評価することは時間がかかるため、CT撮影を実施することで大幅に時間短縮が可能です。また、鼻腔内に炎症が波及している場合などでは、歯の評価と同時に鼻腔内、副鼻腔まで評価を行うことができます。CT画像はコンピューター処理にて立体画像化することにより、飼い主様にわかりやすい説明を心がけております。
施術機器
1.歯科ユニット Oral Ve tと超音波スケーラー iPiezo engine Varios970
歯科処置は、最も多い処置の一つであるため、当院では2箇所で処置を行うことができるよう、機械を2台設置しております。
1台は、歯科用ドリルまで一体化された総合的なユニットです。
2.超音波振動骨切削機(PIEZOSURGERY)
人の歯科医院においても抜歯処置などに使用される機械です。
超音波振動にて歯肉や神経、血管を痛めることなく、歯槽骨、歯根膜を切削できるため、低侵襲な処置が可能であり、疼痛緩和が可能です。
3.半導体レーザー
COMPANION THERAPY LASER Lite Cure,LLC CTS-S)
歯周ポケット内の清掃・殺菌を行うことができる装置です。より狭い歯周ポケットの内部も処置が可能であり、炎症組織に作用し、歯茎の治癒を促進し、歯根との再付着を促します。
歯磨きについて
ご自宅でお口を触らせてくれないワンちゃんなど、歯磨きが難しい子のため、当院では無麻酔で歯磨き処置を行っています。
特殊な器具を使わず、ガーゼや歯ブラシ、歯磨き粉などを使用して歯を磨きます。
当院での歯磨き処置の流れ
- 診察にて獣医師から歯の評価を行います。
- 処置はお昼の時間帯に行います。
その日の手術や検査・処置等の関係でお受けできない場合がありますので事前にご予約をお取り下さい。(お電話でもご予約は可能です。) - 飼い主様とご一緒に歯磨きレッスンを行いながら、歯磨きを行います。
- 初回以降は飼い主様のご希望、ワンちゃんの性格を考慮して、診察室またはお預かりして処置を行います。
私たち人間と同じようにできるだけ長く健康な歯を保ってあげたいものです。
歯石は予防できるものですのでしっかりと管理してあげましょう。
無麻酔での歯石除去について
近頃は無麻酔で歯垢を取ると謳う施設も増えています。しかし、歯がきれいなうちから毎週やっているというなら別ですが、口臭がして歯石がついてから実施しても、歯周病や歯槽膿漏には何の効果もありません。
歯の表面だけをきれいにして、歯周ポケットや歯周病の治療をしないため、どんどん病巣は歯の根っこを蝕んでいきます。きれいに見えても顎の骨は溶けていき、最終的には歯を抜くことになってしまいます。必ず動物病院で治療が必要かどうかを診てもらいましょう。
当院でもたくさんの犬の歯石取り、歯周病の治療、歯槽膿漏の治療をしています。状態の悪い子ほど、治療後に驚くほど元気になることがよくわかります。ボールなどで遊ぶようになり、食欲も処置前以上にあがります。飼い主さんもその違いに気づかれる方が多いです。歯の健康は、犬の生活の質(QOL)の向上と健康管理にとても大切だということがわかります。
歯石処置や歯周病の治療は、歯のデンタルレントゲンもしくはCT検査をして、根っこの状態をしっかりと診ます。その後殺菌効果のある液体を使用してスケーリングを行い、抜歯の必要な歯は抜歯して、歯肉の処置をします。残せる歯は歯周ポケットの治療を行い、最終的に残った歯の研磨を数回繰り返して、表面をきれいにして仕上げます。
よくあるご質問
- Q.歯周病は動物にどのような影響がある?
- A.動物は少しの痛みでは食欲が落ちることが少ないため、気づきにくいですが、重度な歯周病の場合、私達と同様に痛みを伴います。歯周病菌は肝臓や心臓など全身的な疾患に関与すると言われており、歯周病は動物の寿命にも関連します。歯槽骨まで達するような重度の歯周病の場合には、敗血症に至り、止血機能の異常が起こり命取りになることさえもあります。
- Q.健康診断の際に、歯の汚れを指摘されたけれどどうしたら良い?
- A.歯石沈着の程度や歯周炎の程度により異なります。
歯肉炎や歯周炎がほとんどなく、歯石沈着が軽度の場合には、ご家庭での口腔内ケアをご指導します。歯肉炎(歯茎の赤み)が出てくる段階の歯石沈着では、歯石除去のためのクリーニングをご提案いたします。歯周炎(歯肉後退や歯の動揺など)が存在する段階では、歯石除去とともに、歯周組織のクリーニングを行います。この際、ダメージの大きい歯に関しては抜歯が適応になることがあります。
適切な処置を行った後は、毎日の歯磨きが最も重要です。その子にあったレベルでのケアをご指導いたします。 - Q.口腔内処置には全身麻酔が必要なの?
-
A.全身麻酔をかけるということに対して、心配される方がほとんどだと思います。
最近よく、無麻酔で歯石取りを行ってくれるところがあるというお話を耳にしますが、以下についてご説明いたします。- 処置により十分な効果を得るために、
- 安全のためには麻酔が必要です。
- 処置により十分な効果を得るために
口腔内処置は、単に歯石除去を行うことが目的ではありません。
歯周病の治療および予防が目的であるため、歯の表面だけではなく、歯間や歯周ポケットの掃除まで行う必要があります。また、表面だけではなく、歯の裏側も同じように汚れているため、しっかりと口を開けて、内部まで精査する必要があります。無麻酔では、このような十分な処置は不可能です。
そして、歯石除去後は、歯の表面をなめらかにするための研磨作業が必要です。この処置を十分に行わず、歯石を取っただけでは、逆に歯石沈着を起こしやすい凸凹の歯面を作ってしまったことになります。
歯石が取れて見た目が綺麗になっても、十分な処置を行わなければ、歯周病の予防や治療にはならず、症状を悪化させたり、歯石沈着を助長させる原因となってしまうのです。 - 安全面において
歯石を取るための処置は、超音波スケーラーやハンドスケーラーを使って行われますが、超音波スケーラーは歯肉にしみるため痛みを伴います。また、ハンドスケーラーの 先端は鋭く、動物が動いた際に口腔内を容易に傷つけてしまいます。歯石除去中に歯を折ってしまうこともあります。
また、痛みだけでなく、処置の際に感じた恐怖心により口を触らせなくなり、その後のご家庭での口腔内ケアを困難にしてしまうこともあります。
これらは、日本小動物歯科研究会の以下のページに詳しく記載されております。