予防歯科

歯の健康は寿命に直結する

人間と同様、歯の健康は寿命を延ばします。犬においても、歯をきれいに保って育てると、平均15%寿命が延びると言われています。これは2年に相当します。しかしながら、犬猫の歯を磨くというのはなかなか大変なことです。

私(院長の藤井康一)が1990年代初頭にアメリカのペンシルバニア大学獣医学校に留学していた頃は、すでに動物の歯科学が存在していました。口腔外科の先生が学生に歯の種類や病気を覚えさせるためにクロスワードパズルを作らせていたのを覚えています。

そんな授業を受けた後に、一人の学生が「自分の歯もきれいに磨けないのに、犬や猫の歯は磨くなんてことできないよ」と私に話していたのを覚えています。当時、アメリカでは人間の歯の矯正は当たり前の時代でしたが、やはり動物の歯となると、このような考えが一般的だったのかもしれません。

あれからもう四半世紀がたちました。そして現在のアメリカの動物病院では、特に2月がデンタルマンスという特別な月になっていて、毎年この月に麻酔をかけて歯のケアをする飼い主様が沢山います。そのほとんどが、きれいな状態を保つための歯の処置で、歯周病になっている歯を抜くためではありません。完全な予防の歯科処置に変わっています。

一昨年に訪れた、シカゴの動物病院では一般の外科の手術室は1つなのに、歯科の手術室は2部屋ありました。このように時代とともに、悪いところを取るという概念から、悪くならないようにするという予防に方向性が変わっています。

日本でもだいぶ予防の歯科処置の子が増えてきてはいますが、未だに歯周炎の治療が必要な子たちが多いのも事実です。また最近では無麻酔での歯科処置をするという獣医師ではない方の施術が目につきます。歯は表面上きれいに見えても、歯周病の治療をしないと何の意味もありません。

そのため歯はきれいなのに、抜かなければいけない歯がほとんどという子を目にするようになりました。日本には日本小動物歯科研究会という歯科の専門分野を研究するグループがあります。そこでこの無麻酔下歯石除去についてのコメントがありますので、是非ごらんになってください。

また犬の歯は人の歯と違い、かみつぶすという機能はあまりありません。臼歯とは呼ばれていますが、ほとんどの歯は、刺すという行為と裁断するという行為の歯です。処置や磨き方は人とは違いますので、定期的に獣医師の指導を受けてください。

歯周病の「歯肉炎」と「歯周炎」

歯周病は、口腔内の細菌が歯の表面に付着するプラーク(歯垢)を形成する時に始まります。そして、唾液などに含まれるミネラルがその歯垢を硬化させて歯石となり、歯肉炎→歯周炎と進行します。

歯肉炎は、その名のとおり、軽度の歯肉の炎症から始まります。その炎症をそのまま放っておくと、歯肉炎は進行し、歯肉が腫れ、出血がみられるようになります。

細菌が歯肉だけでなく、その奥の歯根膜や、さらに奥の歯槽骨まで進行すると「歯周炎」になります。放っておけば炎症が口内に広がり、歯のグラつきがでてきます。

歯周病は放っておけば、肝臓や腎臓、心臓など二次的な病気へ発展するケースもありますので、十分な注意が必要です。

そうならないためにも、普段の歯のケアは必要となります。普段の歯磨きや歯磨きガムなどの利用などはもちろん大切ですが、なかなか難しいこともあります。

定期的に歯の健診を受け、獣医師の指導を受けてください。そして、歯周病の原因の一つともいえる、歯石除去もお考えください。当院には歯科関係の専門機器も充実しています。また、それらの機器を扱う技術も経験を重ねていますので、まずはご相談ください。