Fujii Times(ブログ)
2019年02月26日
総務スタッフです。先日、日本経済新聞の夕刊(2019年2月23日)を見ていたら1面に『「老ペット、人よりケア厚く?」フィットネスや健康診断・介護施設・・・「家族愛」広がる需要』という内容が掲載されていました。
記事によれば
・犬の平均寿命は8.6歳(1990年)から13.2歳(2014年)に延びた(東京農工大学と日本小動物獣医師会の共同調査)
・高齢期とされる7歳以上は半数を超える
・犬向け会員制施設やフィットネスが盛況
・人間用と同じ装置を使ったCTや内視鏡、腹部エコーなどの健康診断
・飼い主の高齢化による、老犬ホーム(高齢犬の預かり介護)も増加
と書かれています。
動物医療の進歩や健康志向によって、この傾向はさらに大きくなると推測はできます。ワンちゃんやネコちゃんの長寿化・高齢化は、飼い主の皆さんやその家族と長く共に過ごすということですから、より愛情が深まるのも当然のことですし、良いことだと感じます。
このように家族愛が広がることはとても良い傾向ですが、ただ間違った方向に進んではいけないと感じます。
例えば、「人間用と同じ装置を使ったCT」が犬や猫に良いのか。人間と犬猫とはそもそも大きさも違いますし、被曝線量のことも考えないといけません。いくら長寿化したとはいえ、寿命が人間より短い動物に対して被曝線量が多く、それによる発がん率の上昇も懸念も考慮しないといけません。
それゆえ、人間用CTの導入はしませんでした。当院では、数年前から犬猫用の3DマイクロX線CTを導入しております。日本の動物病院では、この機器がまだ数台も入ってない頃でした。その後、導入する病院も増えてきましたが、この機器を導入することで、被曝線量を抑えることができ、また副作用である散乱放射線の低減もできるようになり、動物にも獣医師・動物看護師にも良い結果となっています。また、短時間での撮影(最短18秒/回)ですので、短い麻酔時間での検査も可能となりました。
ここでお伝えしたいのは、単に当院の機器が優れているという話をしたいのではありません。「人間と同じ機器や検査」が動物にとって良いとは限らないということです。さらには、動物にとっての安心・安全ということは、どういうことなのか。それを考え、医療を考えていかないと間違った方向に行く危険性があることを伝えたいのです。
また、その逆で、人間が嫌だ、痛いと思う治療を平気で施していることもあります。例えば、以前からこのブログでも注意喚起をしてきていますが、「無麻酔の歯石除去・歯科処置・歯周病対策」など、当院から考えれば、動物の立場からすればあり得ないわけです。人でも痛くて嫌がることを愛する動物になぜできるのか。ここでもお伝えしたいのは、動物の立場になって考える必要があるということです。
愛犬や愛猫の高齢化・長寿化に伴い、様々なサービスや医療が生まれてくるはずです。ただ、それらを動物の立場になり。その良し悪しを見極めていく必要がありそうです。