診察から治療の流れ
1.診察
診察は、問診・触診・聴診までの一般身体検査の過程を指します。この診察の過程で問題を絞り込み、問診・触診・聴診の結果からどのような病気が考えられるかを判断し、どんな検査をしたら、実際の病気にたどりつけるかを考えます。
問診
飼い主様の情報(主訴)を的確に訊き出していくと同時に、それがどんなことを意味しているのかを訊き出していきます。動物の異常な行動が何を意味しているのかを理解することが重要となってきます。
触診・聴診
問診で訊いた問題点を「13ヶ所200項目以上」のチェックポイントを触診と聴診で細かく調べて、その結果からどのような病気が考えられるかを判断し、どんな検査をしたら実際の病気にたどりつけるかを考えます。
13ヶ所(200項目以上)の身体検査を診察時に常に実施
13ヶ所とは、眼、耳、鼻、咽喉頭、消化器、生殖器、皮膚、リンパ節、可視粘膜、心血管系、呼吸器、筋骨格系そして神経系です。この身体検査を症状にかかわらず、診察時に全て実施することで、飼い主様が気がつかない本来の病気を探ることが可能です。当院では、まず、この触診を徹底し、的確な診断を施すことが重要だと考えています。
もちろん、「目が悪い」という理由でも、目だけをみるのではなく、全身13項目200ヶ所の触診を行った後、眼の診察に移っていきます。足をひきずる場合も同様です。全身の触診のあとに足の部位の特殊な診察をします。この様にして検査を進めて行くことで、どこにどんな異常があるかを把握し、その異常から考えられる病気を分類しなければいけません。その分類のために、血液検査やレントゲン検査などがあるわけです。ですからとりあえずの血液検査、レントゲン検査はないのです。触診を実施せず、とりあえずの検査をやると結局結果が出ない、診断が付かないという事がしばしばです。診断をつけるためには、その前のプロセスである触診・聴診が重要だと考えます。
2.検査
当院の検査方針
当院は「必要な検査しかしないこと」に努めています。治療のための診断をするために、何が本当の問題なのか、そのターゲットを絞り込み、病気の確定、見極めていくための検査なのです。「元気がないから、とりあえず検査しましょう」。それはありえないのです。診察の上、客観データを踏まえ、病気を想定した上で検査をしなければ、本当の診断はつけられないと考えます。
主な検査項目
検査には主に「血液検査」「レントゲン検査」「超音波検査」「細胞診検査」さらに詳細を知るために「内視鏡検査(胃カメラ、直腸鏡)」、「CT検査(画像検査)」、「病理検査」など、があります。
血液検査
貧血、栄養度合い、肝機能、腎機能、炎症反応、ホルモン異常、血糖値など様々なことをチェックします。類症鑑別を判断する意味でも重要な検査です。
レントゲン検査
骨の異常、体の中のしこりや異物、臓器の大きさ、肺の状態、心臓の状態などを知ることができます。最新のCR・DR装置を整えているほか、OFAやPenn Hip検査などの特殊なレントゲン検査も行っています。また、歯科レントゲン機器も導入しています。
超音波検査
心臓のエコーでは心臓機能を、腹部の超音波では腹部のしこり、形態的異常を知ることができます。
細胞診検査
体にできたしこりの正体を知ることができます。さらに検査が必要な場合、病理検査をします。
内視鏡検査
慢性経過の嘔吐や下痢では、内視鏡検査が必要になります。内視鏡検査を行うことで、粘膜表面の状態を直接観察することができ、さらに胃腸粘膜の生検を行って病理組織検査に提出することが可能となります。また、異物の形状にもよりますが、胃内異物の摘出も可能です。さらに細いサイズの気管支用スコープを使用することで、気管支の中を観察することも出来ます。内視鏡用のスコープは見る場所と動物サイズから2サイズを揃えております。
硬性鏡検査(腹腔鏡、関節鏡など)
胃カメラなどと違い、まっすぐな曲がらないファイバースコープを利用して、全身麻酔下でお腹の中、鼻の中、膀胱の中、膣の中、関節の中などの直接画像を見ることができます。
腹腔鏡では、お腹の中をガスで充満させて、臓器をより見やすくして、直接の画像として観察します。そこで見つかった異常などに対し、肝臓、腎臓などの臓器の生検、そして腫瘍などの生検を行い診断に役立てます。
CT検査(画像診断)
CTとはコンピューター断層撮影法(Computed Tomography)の略です。体にエックス線という放射線を照射し、コンピューター処理によって体の内部を輪切り(横断面)や縦切り(縦断像)を画像化する検査です。エックス線は骨や歯など硬い部分は透過しにくく画像では白く見え、肺などの空気を多く含んだ臓器は透過しやすいため黒く見えます。
3.治療
適切な「診察と検査」により診断が下れば、通常、動物医療側としての判断としての治療は決まります。ただ、ここで考えなければいけないのは飼い主様の考え方です。人間と違い、動物は辛い思いをして延命をしたり、治らない病気を一生懸命、病院に通わせ、治療したりすることが、必ずしも大切ではないという考えもあります。治療を医療側が一方的に決めるのではなく、飼い主様の考え方、動物の年齢、将来性、我々の考え方などを検討して決めていくことが大事だということです。「インフォームドコンセント」という言葉を使うことがありますが、患者である動物たち自身が会話することはできないので、常に飼い主様とその動物との関係、飼い主様の考え方などを考慮する必要があると我々は考えています。
治療は「内科治療」と「外科治療」に分けられます。
内科治療
主に、「ホルモンの疾患」や、「臓器の機能不全」「感染症などの治療」は内科治療が主体となります。
外科治療
当院では、動物たちの体への影響を最小限に抑えるべく、低侵襲な手術を行っています。
低侵襲手術とは、一般的に腹腔鏡、関節鏡、胃カメラそして大腸鏡等を用いて、生体に対する外科侵襲を少なくして行う手術です。お腹を開けてしまえば、1週間の入院でも、低侵襲の手術なら24時間の入院で退院できるといった具合に違いが出ます。しかしながら、全身の麻酔時間が長引くというのも重要なマイナス要因ですので、全ての手術が適用なわけではありません。
当院では、悪性腫瘍(がん)や老齢期の疾患に対して大きな武器となる、外科に力を入れています。これは内科の手を抜いていると言うのではなく、内科も最大限の治療ができる様にしながら、外科に関してはさらに力を注いでいるということです。大学病院から数名の外科の先生に来てもらい、チームとして手術をし、また最先端の技術を研修医に教えてもらってより良い技術を身につけてもらって日々外科の能力を高めています。この努力を20年近く行っているため、当院における外科の治癒率はかなり高いと自負しています。