橈尺骨骨折

橈尺骨骨折とは

橈尺骨骨折は、前足を構成する骨の骨折を指し、高所からの落下やジャンプ後の着地失敗などの日常生活の中で発生することが多いです。犬にとって、橈尺骨は歩行や走行など運動をする上では非常に重要な構造であり、そのまま放っておくと痛みや跛行がいつまでも続きます。また、骨折が生じてから長い時間が経過すると元に戻らなかったり、元の形とは違う形で癒合したりすることもあるため、早期の対応が必要です。手術では、骨を元の状態に戻して固定し、正常な骨の機能を回復できるよう、骨同土がくっつくことを促します。年齢や骨折している部分によって治療法が異なってきますので、症状がある場合には早めの診察を受けることを勧めます。

橈尺骨骨折が起こる理由

橈尺骨骨折が生じる原因は、高エネルギー外傷といわれているものすごく強い力がかかった時に生じることがほとんどです。高エネルギー外傷は、交通事故などの強い衝撃を想像しやすいですが、小型犬やトイ犬種にとってはソファからの落下や段差のつまずき程度で十分な衝撃になります。また不注意による抱っこからの落下などもよくある原因としてあげられます。体重は前腕を構成する骨のうち橈骨へ約90パーセントかかり、残りの10パーセントは尺骨へとかかります。高エネルギー外傷が生じた場合には、体重を支えるメインの橈骨への負荷が大きくなり、耐えきれなかった場合に骨折が生じます。

肘関節の模式図

犬の前腕は上腕骨・橈骨・尺骨という3つの骨で構成されている複合関節です。この中でも衝撃を吸収する役目を持っているのが橈骨であり、小型犬ではこの部分の骨折が非常に多いです。治療を行う場合には、当然この体重をかける上で重要な骨である橈骨を強固に固定する必要がある。

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図1:肘関節の模式図

橈尺骨骨折の症状

橈尺骨骨折の症状は、罹患した足を完全に挙げます。骨折が生じると体重を上手くかけることができないので、あげたままの状態が続きます。また橈尺骨骨折後は、骨折に伴う出血が影響して患部周辺に内出血や腫れが生じることが多いです。腫れや出血は痛みを誘発するため、前足箇所を触られるのを嫌がったり、ちょっとした刺激で鳴くようになったりする状況になります。

開放性骨折と閉鎖性骨折

骨折が生じた状況によって、患部の状態は様々です。
骨が外に飛び出している開放骨折の状態では、早急な処置が必要となります。
一般的な閉鎖性骨折の場合は、全身状態に問題がないか確認した後に手術を検討していく必要があります。

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図2:開放性骨折(左)と閉鎖性骨折(右)

橈尺骨骨折の診断方法

橈尺骨骨折はレントゲン検査での診断が一般的です。橈尺骨骨折と一口に言っても、橈骨のどの部分で骨折しているのか、犬種や年齢などの基礎情報によって治療方針が大きく変わってきます。粉砕骨折や元々変形のある骨の骨折の場合は、状況によりCT検査を行うこともあります。皮膚と骨とが近い位置にあるため、骨折部周辺の視診を注意深く行い、骨が皮膚を破って外に出る開放骨折かどうかもしっかりと確認する必要があります。骨折している部分が尖っているにも関わらず、そのままの状態で生活していると転んだり、滑ったりすることで尖った骨の先が周囲の筋肉や組織を傷つけるだけでなく、骨が皮膚を突き破ることで開放骨折へと進行することもあります。

橈骨尺骨骨折のX線写真

X線写真では、橈骨および尺骨が斜めに折れていることがわかります。骨折している領域の骨折片同士の変位が大きいため、体重をかけることができず、骨折片同士が接触することで激しい痛みが生じます。

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図3:橈骨尺骨骨折のX線写真

橈尺骨骨折の治療方法

橈尺骨骨折の治療は大きく保存療法と外科療法に大別されます。保存療法はギプスや包帯を長期間巻くことで骨を安定化させる方法です。この方法は、侵襲が少ないという点で優れていますが、骨がくっつかなかったり、曲がってくっついてしまうなど合併症(トラブル)が生じることが多いため、積極的なオススメはできません。外科治療は金属のインプラントを用いて、骨折片同士をつなぐことで早期に歩けるようになることを目指す治療になります。当然のことながら骨折治療はすぐに治療に取り掛かるかどうかが早期回復のカギとなります。受傷から時間が経ってしまった骨折やある程度の年齢に達してからの骨折は、治癒の期間が長くなりますので、歩き方に異常がある場合にはお早めにご相談ください。

橈骨尺骨骨折のプレート固定による治療法

プレートの設置により骨折部は安定化しており、骨折線はほとんど見えない状態になっている。プレート固定は、強固な固定であるため、手術後から早期に患肢を使用できるようになります。

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図4:橈骨尺骨骨折のプレート固定による治療法

手術費の概算

骨折(橈尺骨、脛骨)プレート整復<15㎏程度までの犬>
手術費用 20万円
インプラント費用 8万円
入院費(6日程度)及び治療費、検査費用 約10万円
合計 約38万円
骨折(橈尺骨、脛骨)ピンニング整復<15㎏程度までの犬>
手術費用 15万円
インプラント費用 約5千円〜1万円
入院費(6日程度)及び治療費、検査費用 約10万円
合計 約26万円

飼い主様へのメッセージ

             

骨折は手術適応なことが非常に多いです。手術は出来るだけ早く実施することで、治るのも早くなり、合併症も少なくなります。先延ばしにせず、当日、翌日など早い手術を受けてください。

飼い主様へのメッセージ

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