椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアについて

脊椎は体軸の主要な骨格であり、犬では首から尾まで35個の脊椎がつながっています。 脊椎の中央部には丸い穴が開いており(脊柱管)、脊髄が走っています。 椎骨と椎骨の間には、クッションの役割をする椎間板と呼ばれる構造物が存在します。

椎間板ヘルニアは、この椎間板と呼ばれる部位に変性が生じ、その内容物が脊柱内に突出することにより起こります。突出した物質により、脊髄が傷害をうけて様々な症状を呈します。脊髄の傷害が軽度であれば、麻痺は示さず、痛みのみを示すこともあります。しかしながら、脊髄の傷害が重度だと、四肢の麻痺を引き起こします。さらに重症の場合には、排尿や排便が自力でできなくなってしまいます。

ダックスフンド、シーズー、ペキニーズ、ビーグルなどが好発犬種として有名です。 最近ではミニチュアダックスフンドの人気に伴って、遭遇することが多い身近な病気となっています。

診断方法

神経学的検査、血液検査、レントゲン検査等を実施した後、椎間板ヘルニアの可能性が疑われる場合には、CT撮影を実施します。 CT撮影により、椎間板および椎間板物質が脊髄を圧迫しているかを調べます。椎間板ヘルニア好発犬種では、複数の椎間でヘルニアを起こしているケースも珍しくありません。そのような場合には、脊髄造影検査を組み合わせて、原因となっている部位(責任病変)がどこであるかを診断します。 この検査は、手術が適応になった際には必ず必要になります。

当院での治療について

1. 内科治療

症状が軽度で、痛みのみを示している場合や、麻痺があっても自力で歩行が可能であるような軽度の麻痺の場合には内科治療が第一選択とされます。 症状に応じて、通院の治療、または入院治療になることがあります。

赤外線レーザーおよびマイクロウェーブ

筋肉の緊張をほぐし、血行を促進し、神経の修復を促す効果や疼痛緩和の治療として活躍します。

2. 外科治療

自力歩行ができないほどの重度の麻痺がおこっている場合には、外科治療が適応となります。また、軽度な麻痺であっても痛みが長期間取れないような場合にも外科が選択されることがあります。手術では、椎骨の一部の骨を削り、神経を圧迫している椎間板物質を直接取り除きます。

超音波骨切削器およびエアドリル

手術にて椎骨を削る際には高速のエアドリルを使用します。骨を削り脊髄の近くまで到達した後は、超音波振動により骨切りができる特殊な器械(ピエゾーサージェリー)を用います。超音波骨切削器は軟部組織を痛めることがない器械であるため、椎骨を削る際、神経を傷つけることがありません。これらの2つの器械を用いることにより、当院では外科侵襲を最小限に抑えた手術を実施することが可能です。

3. 外科治療+再生療法(脂肪幹細胞治療)

自力排尿ができないほどの重度の麻痺の場合には、手術を実施しても麻痺の改善が期待できないケースがあります。手術前に術後の機能回復が悪いことが予想される場合や、手術を実施した後の麻痺の改善が思わしくない場合には、再生療法を組み合わせた治療が可能です。

再生療法は、無菌的に体から脂肪組織を採材し、その中から分離した脂肪幹細胞を培養して増やして体内に戻します。この治療を外科と組み合わせることにより、歩行機能の改善が得られるケースが数多く報告されています。