犬の慢性外耳炎の治療症例紹介
CASE 1 オトスコープ(慢性外耳炎に対する耳道内検査と洗浄治療)
トイプードル 8歳 避妊メス
症状
約5ヶ月間持続している慢性外耳炎があり、点耳薬での治療であまり改善がないため当院に転院してきました。耳の痛みが強く、耳洗浄などのお手入れはかなり嫌がります。
検査・治療
CT検査(写真①)で鼓室胞など鼓膜を越えた耳の深部に異常がないことを確認して、オトスコープ検査を行いました。オトスコープ検査では耳道内の赤みや腫れといった炎症所見や多量の耳垢、毛などの汚れが認められましたが(写真②)、耳道内にポリープなどの異常所見はみられず、また鼓膜も観察可能でした。鼓膜の手前まで汚れは認められたため(写真③)、オトスコープ下で徹底的な耳道洗浄を行ないました(写真④)。その後、耳道内に薬剤を注入し、治療を終了しました。
オトスコープを用いることで耳道内の鼓膜手前までの実際の汚れの程度を観察し、完全にきれいになるまで洗浄を行うことが可能なため、慢性外耳炎に対して積極的な内科治療が可能となります。本症例は処置後耳垢の量が減少し、痛みも軽減されました。
CT検査
オトスコープ検査
CASE 2 耳血腫(外科手術による治療)
ダルメシアン 年齢:4歳 性別:雌
症状
左耳が腫れているということで来院され、左耳介部が腫れて、耳を気にして掻いたり、頭を振ったりするという症状が見られました。
耳介の皮膚と軟骨の間に血液が溜まり、耳介部全体が腫れていました。耳介部の腫れだけでなく、耳道内にも腫れや赤みといった外耳炎所見が認められ、その痒みから耳を掻いたり、頭を振ることにより今回の耳介の腫れにつながりました。
薬の内服と耳介部に溜まった血液を抜く治療および処置を行っていましたが、炎症が落ち着かず、血液や漿液が溜まるのが治まらなかったため、手術を行うことになりました。
検査・治療
耳介の皮膚と軟骨の間に溜る血液や漿液の排出しやすくするために、耳介部に直径8mm程の穴を7か所開けました。最後に血液が溜まる隙間をなくすことと、耳の形をできるだけ維持するために皮膚と軟骨を縫合しました。手術後は、血液や漿液は溜まらなくなり、抜糸後には外耳炎も治癒したため治療は終了としました。
CASE 3 外側耳道切除術(慢性外耳炎に対する外科的治療)
ラブラドールレトリバー 8歳 避妊メス
症状
5年以上にわたって、右耳は慢性的な外耳炎を患っており、耳を掻いたり頭を振ったりといった耳を痒がる症状がみられました。症状が出る度に洗浄や点耳薬の塗布といった治療を行ない、一時的な改善はみられたものの、またすぐに外耳炎の症状を繰り返していました。
検査・治療
犬の耳の外耳道は垂直耳道と水平耳道に分かれているため、通気性が悪く、菌の増殖による外耳炎が起こりやすくなります。外側耳道切除術では垂直耳道の一部を切除して水平耳道を開口させ、通気性を良くすることで外耳道内の環境を改善します。また耳垢の除去や洗浄を容易にすることができます。本症例は右耳の垂直耳道上の皮膚および軟骨を水平耳道部まで切開し、一部の軟骨を切除しました。水平耳道を開口させて、開口部周辺の軟骨と皮膚を縫合しました。
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