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2024年11月25日
猫伝染性腹膜炎(FIP)は有効な治療が乏しく致死率の高い病気でしたが、近年、治療が大きく進歩し、多くの猫が完治できるようになりました。 猫伝染性腹膜炎の治療を当院でも行なっています。
猫伝染性腹膜炎とは・・・ 原因)猫コロナウイルス(強毒性)感染により引き起こされます。
猫コロナウイルスには弱毒性である腸炎を起こすタイプが存在しますが、 この弱毒性ウイルスが体内で突然変異することにより強毒性のウイルスになると考えられています。
症状) 主に腹水や胸水が貯まるウェットタイプと、内臓に肉芽腫を作るドライタイプ、その混合タイプの3つに分けられます。 免疫が弱い2歳未満の比較的若い猫や、シニア猫が発症することが多いと言われています。いずれのタイプでも非常に致死率の高い病気です。特にウェットタイプは非常に進行が早いとされます。
ドライタイプ:発熱・貧血・内臓に肉芽腫性炎症を起こす。ぶどう膜炎、嘔吐下痢、消化管肉芽腫形成による腸閉塞、肝炎、腎炎、痙攣などの症状が出る
ウェットタイプ:胸水や腹水の貯留、黄疸、発熱、消化器症状など
混合タイプ:ドライタイプとウェットタイプのどちらの症状も認める 診断) 臨床症状や身体所見の評価と以下を合わせて評価し総合的に判断します。 FIPの疑いが否定できないにもかかわらず、検査でははっきりとした異常が検出されず診断することがが難しいケースもあります。
血液検査:猫コロナウイルス抗体価、AGP(α1酸性糖タンパク)、高グロブリン血症、SAAなどの測定や血液中のウイルスの存在を調べるPCR検査なども実施されます。
画像診断(レントゲン、超音波):胸水、腹水の貯留、リンパ節腫大の有無、腹腔内肉芽腫病変の有無、腎臓の形態異常の評価などを実施します。胸水、腹水は一般的に黄色で粘稠性が高いことが特徴とされます。胸水や腹水を遺伝子検査に提出して診断することもあります。
治療) これまではステロイド剤など免疫抑制剤やインターフェロン製剤を中心に炎症反応を抑制する治療が行われてきましたが、根治はできず延命するのが精一杯でした。 近年、治療が大きく進歩し、抗ウイルス薬の投与により完治が期待できるようになってきました。 抗ウイルス薬は、海外ではレムデシビルやGS441524が主流で治療ガイドラインなども確立されていますが、これらは日本では入手が困難です。 当院では、国内で入手可能なモルヌピラビル(ラゲブリオ)を使用し治療を行なっています。 近年、モルヌピラビルにおいても高い治療効果があることが報告されております。 モヌルピラビルを使用する場合、FIPのタイプにより薬の使用量が変わります。およそ84日間にわたり1日2回の投薬を行います。 進行したケースでは手遅れとなり有効性が高い抗ウイルス薬を使用しても救命できないこともあります。早期に診断をくだし、治療を出来るだけ早期に開始することが治癒につながります。
原因不明の発熱や、伝染性腹膜炎が疑われるような症状が認められる場合、診断がついたけれど治療を悩んでいる場合には是非ご相談ください。