藤井動物病院

研究論文

滑車溝の楔状骨片を用いて内側滑車稜の増高を施した膝蓋骨内方脱臼の2症例

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Veterinary Surgery

当院オリジナルの膝蓋骨内方脱臼の手術方法がアメリカの外科学会誌(Veterinary Surgery)に掲載されました。

Veterinary Surgeryは米国の権威ある学会誌であり、日本人獣医師でこの学会誌に掲載されることは類まれなことであり、大変名誉あることです。

Medial Ridge Elevation Wedge Trochleoplasty for Medial Patellar Luxation: A Clinical Study in 5 Dogs

膝蓋骨内方脱臼(しつがいこつないほうだっきゅう)とは?

主に小型犬に発生する先天性の疾患で膝蓋骨(膝のおさら)が伸展時(膝を伸ばした時)に内側に脱臼する病気。さらに悪くなると内側に脱臼したままになり(Grade Ⅲ)、さらに進行すると脱臼したままくっついてしまう(Grade Ⅳ)こともある。手術対象は普通の状態で脱臼している症例( Grade Ⅲ以上)。

現状施術の課題

現在の主流である造溝術(溝を深くする方法)を施すだけでは、再脱臼を起こすことが多い。そのため複数の手技を組み合わせて実施することが主流。ただ複数組み合わせても60%の症例で状態は術前より良くなっていても再脱臼していると言われている。

藤井動物病院オリジナルの考案

大腿骨遠位端の内側滑車稜を高くする方法(溝を深くするのではなく、土手の方を高くする方法)によって、関節の骨を変則的な楔状に切り出し、その骨片を反転し内側滑車稜を増高することにより、伸展時の膝蓋骨の脱臼を抑えることができた。

調査結果

Grade Ⅲの膝蓋骨内方脱臼を起こしている犬2頭に対し、それぞれ1脚ずつを手術。再脱臼、歩行異常等なく良好な成績であった。

ひとこと

この方法はすでにアメリカでも紹介され、かなりの多くの先生方に施術される様になってきました。これまでは膝蓋骨が溝から離れる時に脱臼するにもかかわらず、一生懸命、溝を深くしていました。実際には外れるときは溝には接していないのでどんなに深くしても脱臼の抑制には貢献しません。そこで、外れないようにするには土手を高く、堤防を高くすることで脱臼を防げると考えました。その方法をどのようにしたらできるのだろうと考えていた時、りんごを包丁で切って反転させ、乗せ直したら、切り口はぴたりと合うのですが、周りは段差ができることに気付いて、今回のオリジナルの方法が生まれました。またさらに獣医療先進国のアメリカの最も権威のある論文誌に掲載されることで、さらにこの方法の確実性とオリジナル性が証明されたことになったと確信しています。

優秀論文賞