リウマチ様関節

リウマチ様関節の解説

リウマチ様関節は、細菌やウイルスなどの外敵から体を守る自己免疫の仕組みによって自身の細胞(関節を構成する細胞)が攻撃されてしまう免疫疾患です。リウマチ様関節炎では免疫による反応がきっかけとなり関節内に激しい炎症が生じ、関節を構成する軟骨表面や滑膜などの構造物が破壊されます。関節周囲の組織が破壊されることが続くと、表面だけでなく軟骨や骨が破壊されてしまい著しい疼痛や歩行困難など運動機能障害が生じます。これらの免疫応答は、動物に疼痛や運動機能障害を与えるだけでなく、元気消失や食欲低下など全身への悪影響が生じます。この病態を放っておくと、治療を行なったとしても歩けなくなることや、取り返しのつかない状態まで調子を崩すことがありますので、いつものように元気がないことや歩かないような症状があった場合には早めの受診をお勧めします。

症状

リウマチ様関節炎は、きっかけもなく急に発症するため、昨日まで元気があったのに今朝になってから急に元気がなくなったり、熱っぽくなったり、食欲がなくなったりします。また、かかとや手首がベタッと地面に着いてしまったり、足を挙上したり、歩き方が変になるなどの局所的な症状もよく認められます。

このようにリウマチ様関節炎は、食欲不振などの全身的な症状だけでなく、びっこや疼痛など局所的な関節症状もでることがあります(図1)。

図1 リウマチ様関節炎を罹患した症例の外観

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通常、犬や猫は手首や踵を接地せずに歩く動物になります。
何かしらの原因で関節構造に異常がある場合には、写真のように手首や踵を地面につけて歩くようになります。

診断

リウマチ様関節炎の診断は、問診にて前述したような典型的な全身症状が出ているかどうか、が重要となります。検査は一般身体検査、整形外科学的検査、血液検査、X線画像検査、関節液検査の順に行なっていきます。

まず一般身体検査では、口腔粘膜の色や体温測定を行い、全身状態が問題ないかを確認します。元気がないことや食欲がないことは、当然ですが他の病気でも生じる症状です。まずは他の疾患との鑑別を行うためにしっかりと一般身体所見をチェックすることが大事となります。

整形外科学的検査では、運動器に関する各関節の腫脹があるかどうかをチェックします。リウマチ様関節炎の特徴である関節の主張は1箇所のみの場合や全身の関節が腫れ上がっていくことなど症状は様々です。

次に行う血液検査では、犬の炎症マーカーであるC反応性蛋白の検査、抗核抗体やリウマチ因子などの項目を測定し血液検査結果を総合的に判断します。炎症反応の値が異常値である場合には、リウマチ様関節炎の可能性が高くなってきていますので次の検査にすすんでいきます。

X線画像検査では、骨の崩壊像があるかどうかを確認します。崩壊した骨は元に戻ることはないので、疼痛や歩行に関する機能をコントロールしてあげる必要があります (図2)。

整形外科的検査やX線検査で関節の腫脹があった場合には、関節液の検査を行います。関節液は通常、無色透明の液体がごく少量しか関節内に含まれませんが、関節液に異常が生じると、色調や粘稠度に異常が生じたり、その成分関節液中に好中球という炎症細胞が出現したりするため、性状を確認します(図3、4)。

これらの所見を総合して診断を進めていきますが、関節液検査とCRP検査に異常が出た場合リウマチ様関節炎である可能性が高いとされています。

図2 X線画像を用いたリウマチ様関節炎の手根関節の比較観

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左図:リウマチ様関節炎の初期病変

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右図:進行したリウマチ様関節炎の病変

左側はリウマチ様関節炎の初期病変で、関節の腫脹が認められます。
病変が進行してくると右図のようになり、関節面の軟骨が崩壊します。この変化は不可逆性変化であり、このような状態になる前に治療を行う必要があります。

図3 関節液検査により採取した関節液

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正常な関節液は、無色透明でごく少量しか採取できません。
リウマチ様関節炎など関節内に病変がある場合には、黄褐色や赤褐色などの色調に変わり、関節液の量も増加します。

図4 関節液の正常(左図)と異常(右図)の細胞成分

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正常な関節液では、細胞成分はわずかであり、そのほとんどは単核球という細胞です。
関節液が異常になると、右図のように好中球という細胞が増殖し、炎症が起こっていることを示唆します。

治療法

リウマチ様関節炎の外科治療法はなく、内服薬による治療が主になります。症状によっては免疫抑制剤(ステロイドやシクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルなど)を長期間服用する必要があります。また手足の変形によって上手く日常生活が送れない場合には、オーダーメイドの装具を作成し使用することで生活の改善をはかる事が可能です。また、リウマチ様関節炎が背景にある動物は他の整形外科疾患に罹患しやすく、前十字靭帯断裂を生じることも少なくありません。全身状態や足に異常があった場合にはお早めにご相談いただけると幸いです。

飼い主様へのメッセージ

             

関節を長持ちさせるためには、早い段階での診断と治療が大切です。関節自体が破綻してからでは治療は痛みを取る程度になってしまうことがあります。痛みが長期に及ぶ子や歩き方がおかしい子は早めの診断が大切です。

飼い主様へのメッセージ

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