犬の慢性外耳炎について

犬の慢性外耳炎について

外耳炎は、犬にとってとてもストレスのかかる疾患です。気の優しい犬でも、毎回の治療の痛みや、外耳炎の痛み・痒みから、咬みつくようになる子もいます。できるだけ早く治して、痛みや痒みの無い生活に戻してあげることが大切です。

外耳炎の原因の確実な診断と治療で再発を防止し、すでに慢性化して再発を繰り返すような子には適切な処置(外科処置を含む)をしてQOLを向上させてあげましょう。生涯苦痛を背負ったまま生活をすることは、犬にとってかなりの重圧です。

外耳炎の症状は、頭を振る、耳を掻く、耳を触ると痛がる、耳から悪臭がするなど様々ですが、外耳炎が進むと鼓膜などにも影響を及ぼし、中耳、内耳などに影響する可能性もあります。

犬の慢性外耳炎の原因は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが始まりのことが多いです。コッカスパニールのように先天的に特殊な外耳炎をもって生まれる子もいますが、早い段階での処置で苦痛を和らげることが可能です。

外耳炎の他の原因として挙げられるのは、耳疥癬(耳ダニ)の感染、異物(虫、草の実、綿棒などの人工物など)よるもの、ポリープによるもの、耳にある分泌腺である耳垢腺に異常によるもの、ホルモン異常などによるもの、免疫の疾患によるものなど様々です。

健康な耳では自然に健康な状態を保たれますが、湿度の上昇や、耳の中の異常な毛などにより、どこにでもいる菌の繁殖を起こしたり、さらに飼主さんの間違った手入れにより悪化することもあります。そういったことが重なると外耳炎を発症して、さらに悪いケースでは慢性化してしまうことがあります。

外耳炎

診察

まずは耳鏡を使って内部の状態を観察します。感染の可能性がある場合は耳垢を採取して、細菌の培養検査をします。同時に耳垢の直接塗抹標本を作り、どんな菌が感染している可能性があるかを診ます。これらにより有効な抗菌剤や抗炎症剤などの治療薬を見極めていきます。この時点でポリープなどが見つかった場合は、一部分を細胞診や病理生検として採取し検査をします。

オトスコープ

慢性化しているセカンドオピニオンの症例では、オトスコープという内視鏡を使用し、麻酔下で耳の中を鼓膜まで丁寧に洗浄し観察します。泥の様な耳垢が残ったままでは、いくら点耳薬を垂らしても効果はありません。そのため、この検査で耳の中の異物(耳垢、耳毛、異物、炎症産物など)を取り除き、きれいにしながら原因を特定していきます。多くの慢性外耳炎は、この処置後の点耳薬の治療で良くなることが多いですが、耳道があまりにも狭くなってしまっていたり、ふさがっていたりする場合には外科的な処置をしないといけません。

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オトスコープ本体

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オトスコープ耳の中

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オトスコープ処置中

CT検査

耳の穴は外耳道から中耳、内耳とつながっています。これらすべての場所の状況を把握するにはCT検査が必要です。当院では頭だけをCTで取り、耳の奥に異常がないかを検査します。麻酔下ですので、重症な子の場合はオトスコープを併用しながら診断していきます。

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CT検査で鼓室胞を描出したところ
(内耳まで病変が進んでいる耳)

外科処置

外科処置には外側耳道切除、垂直耳道切除、全耳道切除及び鼓室胞骨切り術があります。

外側耳道切除

この手術は、簡単に言うと耳の垂直の穴の部分を横に切り開いてしまう手術です。アレルギーなどから来る痒みは変わらないですが、垂直になっている部分が解放されることで、耳内の排液や湿度などの環境改善がされます。そのため炎症のコントロールが楽になり、外耳炎による犬の苦痛をかなり減らすことができます。

垂直耳道切除

この手術は垂直耳道全体に問題があり、慢性炎症で垂直耳道の軟骨が石灰化して、内科的に一切反応しなくなった耳に行います。コッカースパニエルはこの手術を実施することが多いです。

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垂直耳道切除術前

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垂直耳道切除術後

全耳道切除及び鼓室胞骨切り術

内科的に治療できない慢性の外耳炎、さらに中耳炎を併発している症例では、耳の垂直、水平耳道をすべて除去し、中耳の鼓室に穴を開けて中耳の排液を促し感染を除去します。

外科手術をすることは最終手段ではありますが、長い年月患って生きていくことを考えると適切な手段となる症例も多いです。ぜひ一度ご相談ください。

飼い主様へのメッセージ

             

高温、高湿度の時、気をつけるべきことは多くありますが、特に湿度が高いとき、(犬の)外耳炎に注意が必要です。
みなさんご存知かと思いますが、犬の耳は人間の耳と違い、まっすぐではありません。犬の耳は複雑で、奥の鼓膜まで見えにくい状況です。

もともと、犬に最も多い耳の病気は外耳炎です。犬の外耳炎は慢性化することが多く、内科治療だけでは完治しないケースもあり、当院では外科手術を施すことが多くあります。そうならないように普段から耳に対して気にかけ、耳の洗浄液で定期的な洗浄も必要です。綿棒でのケアはお勧めできません。かえって耳の炎症を強くしてしまうこともあるので注意が必要です。

「まずは健康な状態を知っておくこと」が大事です。普段の健康状態の耳の匂いやしぐさなど、健康な状態を知っておくことで変化、異常がわかります。
外耳炎は、ほぼ間違いなく痛みを感じているのですから、そういったしぐさが感じられたら、少し注意するだけで異常を感知できるのではないでしょうか。また、初期症状でも、普段と違う匂いがすると言います。首のあたりを掻く、頭をいつもより振るなどの行為からも、いつもと違う状況が推測できると思います。

いつもとは違う。そう感じたならば、獣医師に相談ください。愛するワンちゃん、猫ちゃんの健康にご注意ください。もちろん飼い主様の皆さんもご自愛ください。

飼い主様へのメッセージ

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藤井動物病院(日曜日休診)

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