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治療例

治療例1

A.飼い主様からの情報(主訴)

10歳の雄犬、去勢済みの子が、2ヶ月前から血尿と頻尿がある。他院にて膀胱炎と診断され抗生物質は2ヶ月間ずっと飲んでいる。

B.診察(問診・触診・聴診)

問診、触診(直腸検査含む)、聴診で、異常は認められなかった。膀胱の中には少しの尿が貯留。

C.主訴+診察から考えられること

去勢雄である事、血尿、頻尿以外の異常なし。ここから類症鑑別として、膀胱炎、膀胱結石、膀胱ポリープ、膀胱腫瘍、腎盂腎炎、腎臓結石、腎臓腫瘍、腎障害、尿管結石、尿管の異常、尿管の腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺炎、尿路結石、尿道炎 陰茎腫瘍、包皮からの出血などが考えられる。

D.類症鑑別

これらをどの検査で鑑別していくかを決める。

腹部レントゲン検査

結石は多くの場合レントゲンに写るので、この検査で診断が付く可能性が大きい。また臓器の変性性変化の石灰沈着、萎縮などもわかる。

腹部超音波検査

膀胱、腎臓、前立腺の変化や腫瘍、臓器の形態的変化が分かる可能性が大きい。

尿検査(尿の沈渣の検査で細胞診検査)

膀胱を針で刺して尿を取って尿自体の検査、さらに遠心分離器で細胞やゴミを集めて、顕微鏡で見る。細菌がいないか、腫瘍細胞はないか、さらに尿を培養検査に出す事で、細菌の種類、効く抗生物質が分かる。

血液の腎機能検査

腎機能はどうか?そして炎症反応を見ることで炎症はどうかを見ます。
上記の疾患をこれらの検査で区別可能になってきます。それよりも深い検査は、これで分類できないときにします。例えば尿路造影、CT検査、組織生検などです。

E.結果

レントゲンと超音波検査で、膀胱に腫瘤、膀胱結石、尿道結石の問題がありました。膀胱には、細菌はいませんでしたので、治療の最善策は手術をすることで、これらを摘出し、腫瘤を切除し、病理検査に出して結果をみることになりました。

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膀胱内に結石が写っている。

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超音波検査像、膀胱内に腫瘤と結石様物が写っている。

手術により摘出としこりの切除を行う。腫瘤は病理診断検査を行った。

結果:結石はシュウ酸カルシウム結石、腫瘤は炎症性ポリープでしたので、結石の再発がない限りこれで治療は終わりとなります。この症例の場合、当院では、手術適用と判断するまでに1時間、そして手術の計画をして、数日後に手術、2週間後に抜糸でしました。当院に来院されるまで、飼い主様は2ヶ月間という長い時間、血尿で薬を飲ませていたことを考えると、いかに検査までの過程が重要か理解できます。

治療例2

A.飼い主様からの情報(主訴)

1歳のメス、未避妊、体重17kg、後ろ足の使い方が悪いという事で、他院を受診。その病院のレントゲン検査では異常なしとのこと、しかし後ろ足の状態は変わらなかったので、当院を受診。

B.診察(問診・触診・聴診)

触診の結果、両方の後ろ足の股関節の痛みがあることがわかる。

C.主訴+診察から考えられること

既に他院でレントゲンを撮っていて異常がないこと、触診で股関節に痛みを伴うこと、神経系の異常はないことを踏まえて、もう一度、股関節のレントゲンを撮らせてもらい、異常がなければPennHip@検査(認定医による検査)という特殊な撮影法をする事を提案。

D.診断を確定させるための検査

股関節のレントゲンを撮る。このレントゲン画像では股関節に異常はない。

股関節のレントゲンPennHip@検査により股関節の緩みが大きいための疼痛と診断

E.結果

股関節に問題があり、股関節異形成症と診断し、鎮痛剤とグルコサミンのサプリメントを処方。これは先天的な疾患であるので、完治はしないが、将来的な体重コントロールと運動の仕方などに注意して生活してもらう。

治療例3(高齢犬)

症状

13歳の体重約20kgの犬が遊んでいる時に足を上げて、歩けなくなった。

検査結果

左後ろ足の股関節脱臼

飼い主様の希望

年齢的にも犬に負担をかけたくないが、歩けないのは困る。

当院の診断

手術なしで脱臼を整復しても、再脱臼する事が殆ど。麻酔をかけるなら、手術をする事を勧める。手術方法の提案は3つ。

手術法1

トグルピンによる完全整復処置、手術時間は45分程度、しっかりとした固定が得られ、回復も早い。

手術法2

大腿頭の切除術 手術時間は30分程度であるが、手術創は1よりは小さいが、それでも負担が掛かるのと、元の状態の整復ではない。

手術法3

テレビレントゲン下による整復とピン固定。手術時間は15分程度、傷は1センチ程度で筋肉を切ることもなく殆ど術後疼痛も軽度。

結果

3つの中から、年齢負担や状況を考慮して、飼い主様とともに手術法3を選ぶ。手術は15分程度で終わり、翌日から歩き出す。問題なく退院。

治療例4(高齢犬)

14歳ゴールデンレトリバーにおいて、腋窩リンパ節が腫脹して、病理生検のためにリンパ節切除。局所麻酔とインテリジェント凝固システムのバイクランプを使用し止血する事で、処置は10分ほどで終る。

治療例5(高齢犬)

14歳雑種犬において、耳の腫瘍を凍結手術で、処置する。処置時間は15分から30分程度、麻酔処置はせずに行う。疼痛を伴うときだけ、局所麻酔を使用。

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凍結した腫瘍の写真

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処置中の写真