藤井動物病院

藤井動物病院 公式ブログ

(院長:藤井康一著)小型犬から大型犬まで、現役獣医師が犬種別の悩みも解説! いぬ大全304

242188080_4326067597474639_7621159811323133647_n院長の藤井が昨年に書いた「家ねこ大全285」のに続き、「いぬ大全304」がKADOKAWAから出版になります。犬のホンネから、不調のサインまで・・・。試行錯誤の多いトイレトレーニングや散歩のしつけ、犬種別の違いなど、犬と暮らしていると気になる304項目を盛り込みました。ぜひ、手にとってご覧ください。(Amazonページへ

また、「家ねこ大全285」はお隣、韓国でも発売されることが決定しました。

 

7月7日 七夕

6月中旬から7月7日まで、入口に七夕の笹を飾らせていただきました。

はじめはスタッフの願い事が書かれた短冊だけだったのですが、来院された方から短冊に願い事が書けたらいいなというお言葉をいただき、七夕までの一週間、たくさんの方に短冊を書いていただきました。

7日で飾りを片付けてしまうのは名残惜しかったのですが、本来、七夕は「一夜飾り」といわれていて6日の夕方に飾りつけて7日の夜には片付けるものだそうです。

また「神様がいるうちに片付けないと願いが叶わない」という説もあるそうで、せっかくたくさんの方に書いていただいた願い事が叶わなくなってしまうのは悲しいので、惜しみつつ今年の七夕を終了させていただきました。

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みなさま本当にありがとうございました。
どうかみなさまの願いが叶いますように。

総務 秋本

胆嚢の病気(胆嚢粘液嚢腫、胆泥症、胆管閉塞、胆嚢破裂、胆嚢炎、胆石症など)

動物が長生きすることでホルモンバランスを崩したり、食餌の偏りによって、胆嚢の病気が増えてきています。高脂血症や肝臓の検査数値が高いといわれたことのある子は、とても多いと思います。

胆嚢の病気の中で、特に注意しなければいけないのは胆嚢粘液嚢腫です。症状などが全くなくても進行してしまっていることがあります。胆嚢粘液嚢腫は、腹部超音波検査の検診で突然発見されることも少なくありません。しかしながら、内科的な治療では治療は難しく余命も外科処置に比べて優位に短くなるのが現実です。そのため、発見された場合は早めに外科的切除を行うことが大切です。

胆嚢粘液嚢腫の手術は、胆嚢破裂などの合併症がなければ胆嚢切除だけで済みますので、1時間程度で終わります。無症状で発見された場合は術後の経過や入院期間も数日と早く、将来的に問題を起こすことはあまりありません。しかしながら高齢な子も多いため、手術には万全の体制を整えて臨むことが大切です。

もしすでに胆嚢破裂、胆嚢閉塞などの症状で食欲不振や重度の症状が出ている場合は緊急手術になり、手術中の危険性も高まります。そのためなるべく無症状の時期に発見して、早期に手術をすることが一番の方法です。胆嚢が悪いといわれたら、的確な超音波検査に診察が必要です。この検査で見落としをしないことが早期発見早期治療につながります。

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢の収縮力の低下、胆汁の流量の減少による胆嚢の水分調節の変化が、胆嚢粘液嚢腫の原因の一つと考えられています。しかしながら単純にそれだけではすべての犬が胆嚢粘液嚢腫に罹患するとは言えません。例えば「胆泥症」と獣医師に言われたとしても、それが胆嚢粘液嚢腫になるということではないのです。

胆嚢粘液嚢腫は胆嚢内で胆嚢壁から粘液が過剰に分泌され、胆嚢内に濃いゼラチン状の胆汁が蓄積されます。数週間から数ヶ月の間に粘度が上昇し、最終的には胆嚢の内腔全体を厚いゼラチン状の物質が占めるようになります。これを胆嚢粘液嚢腫と診断します。胆嚢の中は黒色のゼリーの様で弾力性があり、流れ出るというより絞りだすもしくはスプーンで掻きだし、剝がしとる感じです。

この疾患にかかるリスクを上げる要因として、下記が挙げられます。

・クッシング病(副腎皮質機能亢進症)の罹患:リスクが29倍になるという報告があります。
・甲状腺機能低下症
・炎症性腸疾患(IBD)
・シェットランド・シープドッグ(遺伝的要因)

〇症状

先ほども述べましたように、胆嚢粘液嚢腫の臨床症状は無症状のものから非特異的なものまで多く、健康診断等の腹部超音波検査で偶然発見されることもしばしばあります。特に挙げるとすれば、以下の様な症状が出ます。
元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、粘膜の黄疸、腹痛、腹部の張りなど。
症状が出た時には、既に緊急や重症のことがよくあります。

〇診断方法

胆嚢粘液嚢腫の診断は、身体検査と血液検査、そして腹部超音波検査の画像診断に頼って行われます。特に腹部超音波検査は、病気の初期段階で非常に有効です。そのため食欲不振や嘔吐などの症状が現れた時には、一度は腹部超音波検査をして胆嚢の検査をしておくことが大切です。胆嚢粘液嚢腫の症例ですでに重い症状で来院した子の多くは、こういった検査時にすでに胆嚢破裂を起こしています。早期発見により死亡のリスクを下げますので、定期検診を忘れずに行いましょう。

胆嚢粘液嚢腫1

胆嚢粘液嚢腫1


胆嚢粘液嚢腫2

胆嚢粘液嚢腫2

胆嚢粘液嚢腫が進行するとゼラチン状物質が胆管にまでおよび、胆管閉塞して生命の危険にさらされたり、胆嚢壁の炎症性変化により胆嚢が破裂して、胆汁内容物が腹部に流出することもあります。内科療法は常にリスクを背負って生きていかなければなりません。

〇治療方法

胆嚢粘液嚢腫の犬には第一に外科治療が推奨されます。超音波検査で発見されたら胆嚢摘出術を行うことが第一選択です。最近のデータでは、内科療法をしている犬より外科療法を実施したこの方が優位に長生きだったことと、内科療法をしていた犬も結果的に外科手術を受ける結果(胆嚢破裂、胆嚢炎など)になることが多いということです。こういった重篤な状態になったり、胆嚢が破裂するまで胆嚢摘出を遅らせることは、生命を脅かすことに他なりません。

特に無症状の胆嚢粘液嚢腫の胆嚢切除をすることはリスクを下げ、手術時間を短くし、さらに回復も早くなります。確かに他の外科手術と同様に全身麻酔にはリスクが伴うことはありますが、早期に手術を実施する方が麻酔のリスクを気にするより確実に治癒に近づきます。

 

〇予後

症状が重い状態で手術した動物は手術のリスクは高まりますが、手術後に合併症等なければ、長期間にわたり問題なく過ごせることが多いです。

胆泥症

腹部超音波検査をすると見られる、胆嚢内に通常の胆汁より白く描出される粘稠性の高い泥状のものを胆泥と呼びます。

胆泥症軽度

胆泥症軽度

胆泥症重度

胆泥症重度

胆泥症重度2

胆泥症重度2

重力方向にたまりますので、流動性があります。多くの場合臨床症状はともなわないことが多く、無処置の場合もあります。しかしながら肝臓の数値が高い動物、重力方向に動かなくなるなど粘稠性が増す場合は、胆嚢から胆汁の排出を活発にする薬や、肝臓の薬を飲むことで経過を見ていきます。同時に腹部超音波検査により、胆石、胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫などの可能性を診断することも大切です。

胆管閉塞(肝外)

一般に胆汁は肝臓から肝臓内の肝内胆管を通り、総胆管につながり、十二指腸に排出路があります。胆嚢は肝臓と総胆管の間にあり、空腹時は胆嚢の中に胆汁を蓄えておき、食餌をすると消化のために袋を絞り胆汁を総胆管から十二指腸に排出する機能があります。

この経路が胆嚢粘液嚢腫、胆嚢

胆嚢

胆嚢


や胆管腫瘍、胆石、
胆嚢結石

胆嚢結石


膵炎
膵炎

膵炎

膵炎2

膵炎2

膵炎3

膵炎3


、膵臓の腫瘍などにより閉塞して、胆汁が十二指腸に流れなくなることを胆管閉塞と呼びます。こうなると胆嚢は胆汁のうっ滞により拡張し、ひどいときには胆嚢や胆管の破裂を起こします。

〇症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹部痛、粘膜の黄疸などの症状が出ます。症状には個体差があり、食欲不振程度の症状の動物やショック状態のように虚脱する動物もいて様々です。

〇診断方法

血液生化学検査、尿検査、X線検査、腹部超音波検査等で閉塞を確認すること、そして閉塞の原因を特定することがもっとも大切です。

〇治療方法

胆管閉塞は閉塞の原因によって治療法は異なります。閉塞や狭窄が胆管や膵臓の炎症によるものなら、内科治療で落ち着いてしまう動物もいますが、胆石や腫瘍などによる閉塞の場合は早期に外科処置が必要です。外科治療の目的は閉塞の解除ですが、胆石がどうしても動かない、取り除けない、腫瘍があり再開通できない場合などはあらゆる手術方法を用いて、胆汁を腸に流す方法を考えて処置します。

〇予後

原因により様々です。腫瘍以外の症例では、内科療法、外科療法を含め一度症状が落ち着いて治癒してしまえば、通常の生活に戻れます。

胆嚢破裂

胆嚢破裂は胆嚢の閉塞などに続発して起こる疾患です。胆嚢がおなかの中で破裂することにより、胆汁成分の腹腔内への流出による胆汁性腹膜炎を生じます。特に胆石症、胆嚢粘液嚢腫を持病に持っている動物によく見られます。

〇症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹痛、腹部膨満、発熱、黄疸など。

〇診断方法

血液生化学検査、尿検査を実施します。血液検査で肝臓の数値、血中ビリルビン値、白血球数、炎症反応(CRP)の上昇が見られます。また尿色も黄色になり、ビリルビン値の上昇が見られます。腹部超音波検査で胆嚢の破裂の所見を確認することや、腹膜炎の症状を見逃さないことが大切です。腹水が溜まっている場合は腹水を少量取り、胆汁漏出の診断をします。

胆嚢粘液嚢腫破裂

胆嚢粘液嚢腫破裂

〇治療方法

緊急の外科手術が必要です。夜間の場合は夜間救急での手術実施になることもあります。しかしながら、動物がどのような状態であるかがとても大切です。ショック状態でぐったりしている場合、手術はかえって危険です。動物の状態を手術できるところまで安定させて、手術開始になります。破裂した場所などにより手術方法は変わりますが、すべての状況に対応できるように準備して手術を行います。

〇予後

胆汁による腹膜炎が重度の場合は、予後が悪いことが多いです。腹膜炎は、感染なども含めて生存率を左右します。術後を乗り切ることができれば、通常の生活に戻れることが多いです。

歯科処置 及び 口腔外科(歯周病、歯石、歯肉炎、抜歯、破折歯、口腔内腫瘍など)

動物の歯のお手入れはとても大切です。お手入れ次第で、寿命を15~30%伸ばせると言われています。歯周病にかかるということは、毎日雑菌を口から飲みこみ、顎の骨に感染を起こしている状態です。それがいろいろ悪さをします。ただ歯石を取って、きれいにするだけでは変わりません。完全に安全に、正しい治療をして処置をすることが大切です。

私の親族に数名の人の歯科医がいますが、犬の歯科処置は人よりはるかに大がかりであると話します。それは、犬の歯科処置が人のそれとは悪くなって進んでいる度合いがひどいこと、歯磨きを毎日することが基本的に難しいこと、そして最大の要因は、歯科処置の際に高齢動物や状態の悪い子にも全身麻酔をかける必要があるということです。

当院には手術可能な部屋が3部屋あり、人工呼吸器付きの麻酔器が4台稼働しています。歯科処置専用の手術室の麻酔器とモニターは、最もハイスペックのものを使っています。これは通常人間の大学病院の一般外科に使用されているモデルと同等です。さらに歯科処置をする人、助手、麻酔医、外回りの看護師と最低4名体制で行っています。

歯科用麻酔器

歯科用麻酔器

歯科処置中(1)

歯科処置中(1)

歯科処置中(2)

歯科処置中(2)

なぜ麻酔とモニターに力を入れるかというと、歯科処置をする動物は高年齢が多いこと、骨に直接触ることがある手術なので、麻酔深度(麻酔の深さ)が動物に苦痛を与えることが無いようにするためです。整形外科、開胸手術など痛みを伴う手術や、肝臓、胆のうなどのリスクを伴う手術を毎年何百とこなしてきている当院ならではの麻酔技術を駆使して、もう麻酔は無理といわれた症例に対しても、QOL向上のために歯科処置をすることがあります。20歳を超えた犬も、歯科処置後から「ボール遊びをするようになった」と喜ばれたこともあります。

歯だけをきれいにできても、犬猫が調子を崩しては元も子もありません。当院にも歯科処置後体調を崩したという子がセカンドオピニオンで来院します。いろいろな理由で腎機能が落ちていたり、歯に適切な処置を行っていなかったりすることがあります。

更には、歯はきれいに磨かれているのですが、しっかりと検査をしていないばかりに、歯に対して適切な処置ができていない症例も多くあります。もちろん無麻酔処置は問題外でお勧めできませんが、通常の麻酔下での歯科処置であっても同様です。当院ではCT断層撮影などの画像診断をしっかりと行い、歯科処置をすることも多いです。特にセカンドオピニオンで来院された方には、この検査は本当に悪い歯を把握できるので大変好評です。

マイクロCT及びデンタルレントゲン

マイクロCT及びデンタルレントゲン

犬歯の口鼻瘻管

犬歯の口鼻瘻管

犬歯の歯周病から口鼻瘻管

犬歯の歯周病から口鼻瘻管

また「歯科処置」と言ってはいますが、口腔外科も同様に行います。歯が悪い子は歯肉にしこりができることが多いです。良性の過形成と言われるものから悪性腫瘍まで、しっかりと診断治療をしないと結果として無意味な歯科処置になることもあります。ですから当院では、すべてのことに万全の体制で備えるために、相応の機器を揃えて対処しています。(もちろん腫瘍などの時には顎の骨を切る処置なども行います。)動物の場合は口を容易に開けてくれませんので、手術中でも処置が変わることがあります。セカンドオピニオンで来院した症例では外科手術に移行することも少なくありません。

症例によって多少異なりますが一日の流れを紹介します。

歯科処置の予約日当日に、すべての処置をします。動物の苦痛を取ることと、検査の回数を減らすというメリットがあるためです。

☆予約日は、朝食を抜いた状態で午前中の診療に来院いただきます。

☆お預かり後、最初に血管に留置針という針を設置して、全血検査、血液生化学検査、血液凝固系の検査(抜歯時に血液が止まるかどうかの検査)、胸部レントゲン、腹部超音波検査検査などを行います。

☆留置針を通した後は、朝食を抜いていますので、点滴開始により脱水状態の改善を行います。手術前に脱水を改善していないと、腎不全などの合併症が起こってしまう可能性があるからです。

☆検査結果で異常が出た場合は、飼い主さんと連絡を取り、その先に進むかをリスクなどを説明した上で決定します。特に血液の凝固能力を測る検査は、抜歯などを考えているときには重要です。歯槽膿漏などの時は、血液が止まらなくなることが稀にあります。そういったことも考えて、万が一の時の場合に輸血(全血、成分輸血など)もできる体制を整えています。

☆検査で大きな問題がない場合は、脱水の改善があれば手術に進みます。麻酔前に鎮痛剤、抗生物質等の前投与を行います。

☆最初に入れた留置針から短時間の麻酔薬を注入して導入をし、顎の力がなくなったらすぐに気管に気管チューブを入れ吸入麻酔に切り替え、呼吸をコントロールして麻酔維持を行います。麻酔がしっかりかかり不動化したら、歯周病のひどい子はCT断層撮影をします。これで顎骨の吸収像3D画像でわかりますし、鼻への浸潤は2D直行画像でよくわかります。撮影は1分以内には終了しますので、撮影後すぐに歯科処置に移ります。

☆歯科処置はまず超音波スケーラーと次亜塩素酸水を利用して、歯石の除去と消毒を行いながら実施します。

「犬」超音波スケーリング

「犬」超音波スケーリング

 「猫」超音波によるスケーリング

「猫」超音波によるスケーリング

☆歯石除去が終わると、まず歯周ポケットの深いところは歯肉をカットして消毒し、CT検査で抜歯適用の歯があるときは抜歯をします。破折した歯など根っこの強いものは、抜歯専用の機械を使用して抜歯します。さらに抜歯した場所には薬を注入して解ける糸で縫合します。

「犬」歯石処置前(1)

「犬」歯石処置前(1)

「犬」歯石処置前(2)

「犬」歯石処置前(2)

 「犬」歯石処置後(1)

「犬」歯石処置後(1)

「犬」犬歯石処置後(2)

「犬」犬歯石処置後(2)

「猫」超音波機器による抜歯処置

「猫」超音波機器による抜歯処置

☆残った歯は、コンパウンドという磨き用の研磨剤を数種類使って数回磨きます。

「猫」超音波によるスケーリング

「犬」コンパウンドで磨いている

「犬」コンパウンドで磨いている

「猫」コンパウンドで磨いている

☆最後に喉頭部の異物や水分を丁寧に取り除き、麻酔を覚ましていきます。その際、顎の骨を削るなどの疼痛の強い症例では、麻薬系の鎮痛剤を使用して痛みを取り除きます。

☆麻酔を覚まして、気管に入れていたチューブを抜いたら、後は点滴し、腎臓などの保護をして、夕方の帰りの時間まで健康状態の確認をします。

☆抜歯した場所の出血や鼻に瘻管ができていた場合は、丁寧に処置をしないと取り返しのつかないことになります。なぜなら、動物は人と違って出血部位を手で抑えたり、鼻血を上向いて止めてくれたりしないからです。また短頭種(ブルドッグ、パグなど)では、手術後に鼻からカテーテルを通して、酸素の吸入の補助を設置します。

☆飼主さんが迎えに来る頃には、通常犬猫はほぼ普通の状態と変わりません。お家に帰ってその日はおとなしく過ごし、翌日からは問題がなければ通常通りの生活で大丈夫です。

このように、当院では歯周病、歯槽膿漏、歯肉炎、歯石処置、破折歯、そして口腔内の腫瘍に対しても同様の手順を踏んで、どんなシチュエーションでも対応できるように準備しています。

犬の慢性外耳炎について

外耳炎は、犬にとってとてもストレスのかかる疾患です。気の優しい犬でも、毎回の治療の痛みや、外耳炎の痛み・痒みから、咬みつくようになる子もいます。できるだけ早く治して、痛みや痒みの無い生活に戻してあげることが大切です。

外耳炎の原因の確実な診断と治療で再発を防止し、すでに慢性化して再発を繰り返すような子には適切な処置(外科処置を含む)をしてQOLを向上させてあげましょう。生涯苦痛を背負ったまま生活をすることは、犬にとってかなりの重圧です。

外耳炎の症状は、頭を振る、耳を掻く、耳を触ると痛がる、耳から悪臭がするなど様々ですが、外耳炎が進むと鼓膜などにも影響を及ぼし、中耳、内耳などに影響する可能性もあります。

犬の慢性外耳炎の原因は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが始まりのことが多いです。コッカスパニールのように先天的に特殊な外耳炎をもって生まれる子もいますが、早い段階での処置で苦痛を和らげることが可能です。

外耳炎の他の原因として挙げられるのは、耳疥癬(耳ダニ)の感染、異物(虫、草の実、綿棒などの人工物など)よるもの、ポリープなどの腫瘍によるもの、耳にある分泌腺である耳垢腺に異常によるもの、ホルモン異常などによるもの、免疫の疾患によるものなど様々です。

健康な耳では自然に健康な状態を保たれますが、湿度の上昇や、耳の中の異常な毛などにより、どこにでもいる菌の繁殖を起こしたり、さらに飼主さんの間違った手入れにより悪化することもあります。そういったことが重なると外耳炎を発症して、さらに悪いケースでは慢性化してしまうことがあります。

診察

まずは耳鏡を使って内部の状態を観察します。感染の可能性がある場合は耳垢を採取して、細菌の培養検査をします。同時に耳垢の直接塗抹標本を作り、どんな菌が感染している可能性があるかを診ます。これらにより有効な抗菌剤や抗炎症剤などの治療薬を見極めていきます。この時点でポリープなどが見つかった場合は、一部分を細胞診や病理生検として採取し検査をします。

オトスコープ

慢性化しているセカンドオピニオンの症例では、オトスコープという内視鏡を使用し、麻酔下で耳の中を鼓膜まで丁寧に洗浄し観察します。泥の様な耳垢が残ったままでは、いくら点耳薬を垂らしても効果はありません。そのため、この検査で耳の中の異物(耳垢、耳毛、異物、炎症産物など)を取り除き、きれいにしながら原因を特定していきます。多くの慢性外耳炎は、この処置後の点耳薬の治療で良くなることが多いですが、耳道があまりにも狭くなってしまっていたり、ふさがっていたりする場合には外科的な処置をしないといけません。

オトスコープ自体

オトスコープ自体


オトスコープ耳の中

オトスコープ耳の中


オトスコープ処置中

オトスコープ処置中

CT検査

耳の穴は外耳道から中耳、内耳とつながっています。これらすべての場所の状況を把握するにはCT検査が必要です。当院では頭だけをCTで取り、耳の奥に異常がないかを検査します。麻酔下ですので、重症な子の場合はオトスコープを併用しながら診断していきます。

CT鼓室胞(内耳まで病変が進んでいる耳)

CT鼓室胞(内耳まで病変が進んでいる耳)

外科処置

外科処置には外側耳道切除、垂直耳道切除、全耳道切除及び鼓室胞骨切り術があります。

外側耳道切除:この手術は、簡単に言うと耳の垂直の穴の部分を横に切り開いてしまう手術です。アレルギーなどから来る痒みは変わらないですが、垂直になっている部分が解放されることで、耳内の廃液や湿度などの環境改善がされます。そのため炎症のコントロールが楽になり、外耳炎による犬の苦痛をかなり減らすことができます。

 

垂直耳道切除:この手術は垂直耳道全体に問題があり、慢性炎症で垂直耳道の軟骨が石灰化して、内科的に一切反応しなくなった耳に行います。コッカスパニールはこの手術を実施することが多いです。

垂直耳道切除術前

垂直耳道切除術前

垂直耳道切除術後

垂直耳道切除術後

 

全耳道切除及び鼓室胞骨切り術:内科的に治療できない慢性の外耳炎、さらに中耳炎を併発している症例では、耳の垂直、水平耳道をすべて除去し、中耳の鼓室に穴を開けて中耳の廃液を促し感染を除去します。

外科手術をすることは最終手段ではありますが、長い年月患って生きていくことを考えると適切な手段となる症例も多いです。ぜひ一度ご相談ください。

猫の尿について

猫は大昔砂漠で生活をしていたことにより、水をあまり必要としない体質が備わったと言われています。通常の水分摂取は小動物を捕らえて、その獲物の体液からの水分がメインで、それだけでも十分に生活できるような機能を身に付けているということです。そしてその少ない水分を効率よく使い、凝縮した尿を出す仕組みができています。しかし人間に飼育され家猫として過ごすようになると、この機能は少し不都合が生じてきます。

そもそも水を飲むという習慣があまりない猫の主食が、ドライフードに変わることで脱水が起きやすくなり、その脱水から尿がさらに濃くなり、尿中に結晶(結石)が析出して、尿の砂粒症や結石症になってしまいます。さらに雄猫は尿道が細いため、結晶や尿石が尿道に詰まって、排尿ができなくなり、致死的となることがあります。

下部尿路疾患(FLUTD)はそういった体質からきている病気で、比較的若い猫に多発する病気です。こういった泌尿器疾患が増え、さらに色々な疾患に罹患して脱水することからますます腎臓に負担をかけてしまい、慢性腎臓病を起こしやすくなると言えます。

では現代の家庭で、猫が水を摂取しやすくするにはどうしたら良いでしょうか?猫が飲用に置いた水に足を入れてしまうことはありませんか?それは、置いてある水を猫が視覚で認識できにくいためです。そのかわり猫は聴覚が鋭く、水の音のする流れる水を飲む猫も多いです。例えば蛇口から直接飲んだり、お風呂場の水などもよく飲みます。流れる水を演出する水の器もありますが、これも効果的です。また冬場は冷たい水より体温に近い水の方が飲みやすいので、温めた水を飲ませるのも大切です。食べ物に水を混ぜる、もしくは水分量の多いウェットフードを与えるのも良い方法です。最後に水飲み場所ですが、お手洗いのそばは避けて、2~3か所で飲めるようにしてあげてください。

病院の定期検診で尿検査をすることはとても大切です。自然に排尿した尿は検査には向かないことがあるので、病院で膀胱に直接針を刺して尿を採取してもらう方が正確な診断ができます。そして脱水状態を見るには尿の濃さを調べることが大切です。尿の濃さは尿比重(SG)でみます。また猫に多いストラバイト結石を作るのは尿PHでアルカリ性になっている、さらに顕微鏡下で結晶があるなど検査します。慢性腎臓病の診断にも尿検査は必須です。とても大切な検査ですので、若くても病院で半年に1度ぐらいは尿検査を受けましょう。

猫の結石用の処方食も効果がありますが、慢性腎臓病などの病気になると尿が薄くなるので、尿結晶や結石を作らなくなります。下部尿路疾患(FLUTD)用の処方食を食べさせている猫も、慢性腎臓病になってしまったら、処方食は慢性腎臓病用に変えなくてはいけません。飼い主さんの中には尿が出ているから安心だと思われている方が多いですが、尿が薄くなると腎不全を疑わないといけません。猫に多い慢性腎臓病についてもいずれ書きます。

犬の歯周病(口臭、歯石、歯垢)

犬とともに暮らしていく上でとても大切なものの一つに、歯のケアがあります。犬は歯をきれいに保つことで、寿命が平均2年以上延びるというデータがあります。これは人でも同様ですが、歯周病、歯槽膿漏になって口の中に悪い菌がはびこると、顎の骨を溶かし、血液の中に菌が入り込んで、心臓、腎臓などの臓器にトラブルを起こすことがあります。骨が溶けてしまうまで感染している状態は、他の病気では通常考えられないことです。これは犬にとって、とても痛くて辛い病気なのです。

しかしながら多くの飼い主さんは、犬の口臭は気にしても、歯周病や歯槽膿漏で犬がとても辛い状態であることにはなかなか気づきません。その理由の多くは、犬がよく食べるから、歯が痛いとは気づかなかった、というものです。口を触ったり、歯磨きをすると極度に嫌がる子は、おそらく歯が痛い可能性があります。口の中をしっかり観察してください。口臭はないか?歯の色は白いか?茶色い歯石は付着していないか?歯ぐきは赤くなっていないか?などをしっかりと見てください。異常があれば早めに動物病院に相談して下さい。

近頃は無麻酔で歯垢を取ると謳う施設も増えています。しかし、歯がきれいなうちから毎週やっているというなら別ですが、口臭がして歯石がついてから実施しても、歯周病や歯槽膿漏には何の効果もありません。歯の表面だけをきれいにして、歯周ポケットや歯周病の治療をしないため、どんどん病巣は歯の根っこを蝕んでいきます。きれいに見えても顎の骨は溶けていき、最終的には歯を抜くことになってしまいます。必ず動物病院で治療が必要かどうかを診てもらいましょう。

当院でもたくさんの犬の歯石取り、歯周病の治療、歯槽膿漏の治療をしています。状態の悪い子ほど、治療後に驚くほど元気になることがよくわかります。ボールなどで遊ぶようになり、食欲も処置前以上にあがります。飼い主さんもその違いに気づかれる方が多いです。歯の健康は、犬の生活の質(QOL)の向上と健康管理にとても大切だということがわかります。

歯石処置や歯周病の治療は、歯のデンタルレントゲンもしくはCT検査をして、根っこの状態をしっかりと診ます。その後殺菌効果のある液体を使用してスケーリングを行い、抜歯の必要な歯は抜歯して、歯肉の処置をします。残せる歯は歯周ポケットの治療を行い、最終的に残った歯の研磨を数回繰り返して、表面をきれいにして仕上げます。

【12月25日更新】飼い主の皆様へ

新型コロナウイルスの影響で様々な形でご迷惑をおかけしております。
さて当院では、新年1月4日の診療より、診療時間などについて改定していきますので、なにとぞご協力をお願いいたします。

『ご来院と診察』
・通常通り予約を取っていただき、病院にご来院ください。
・院内への入室はできるだけ飼い主様お一人様のみでお願い致します。
・お車での待機をご希望の方は受付にお伝えください。順番が来ましたらお電話でご連絡を差し上げます。
・院内へはマスク着用と入り口での手指の消毒をお願いします。
・診察室でも飼主様お一人の入室でお願いいたします。

『入院中の動物について』
・面会時間を13時30分から15時30分までとさせていただきます。その際も飼主様一人でのご来院をお願いいたします。

『診察時間』
・診療時間前後の消毒時間を考慮し診療時間は
午前9:00から11:45迄
午後1:30から5:45迄と致します。(午後6時終了)

2020年12月25日
藤井動物病院
院長 藤井康一

「家ねこ大全285」がKADOKAWAから出版されます

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猫の気持ちから病気の症状まで分かる本を院長の藤井が書き下ろしました。猫の鳴き声「にゃーご」に合わせて285項目の情報が掲載されています。発売日は9月2日。詳細とAmazonの予約受け付けはこちらからご確認ください。

【診療日変更】日曜日の診療をいたします(獣医師1名体制)

4月26日(日)より、日曜日の診療をいたします。
勤務医は中林獣医師1名となります。
一般診療も行いますので、診察ご希望の場合は
ご予約をお願いいたします。

ご予約専用電話番号
045-439-3677

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