藤井動物病院

藤井動物病院 公式ブログ

胆嚢の病気(胆嚢粘液嚢腫、胆泥症、胆管閉塞、胆嚢破裂、胆嚢炎、胆石症など)

動物が長生きすることでホルモンバランスを崩したり、食餌の偏りによって、胆嚢の病気が増えてきています。高脂血症や肝臓の検査数値が高いといわれたことのある子は、とても多いと思います。

胆嚢の病気の中で、特に注意しなければいけないのは胆嚢粘液嚢腫です。症状などが全くなくても進行してしまっていることがあります。胆嚢粘液嚢腫は、腹部超音波検査の検診で突然発見されることも少なくありません。しかしながら、内科的な治療では治療は難しく余命も外科処置に比べて優位に短くなるのが現実です。そのため、発見された場合は早めに外科的切除を行うことが大切です。

胆嚢粘液嚢腫の手術は、胆嚢破裂などの合併症がなければ胆嚢切除だけで済みますので、1時間程度で終わります。無症状で発見された場合は術後の経過や入院期間も数日と早く、将来的に問題を起こすことはあまりありません。しかしながら高齢な子も多いため、手術には万全の体制を整えて臨むことが大切です。

もしすでに胆嚢破裂、胆嚢閉塞などの症状で食欲不振や重度の症状が出ている場合は緊急手術になり、手術中の危険性も高まります。そのためなるべく無症状の時期に発見して、早期に手術をすることが一番の方法です。胆嚢が悪いといわれたら、的確な超音波検査に診察が必要です。この検査で見落としをしないことが早期発見早期治療につながります。

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢の収縮力の低下、胆汁の流量の減少による胆嚢の水分調節の変化が、胆嚢粘液嚢腫の原因の一つと考えられています。しかしながら単純にそれだけではすべての犬が胆嚢粘液嚢腫に罹患するとは言えません。例えば「胆泥症」と獣医師に言われたとしても、それが胆嚢粘液嚢腫になるということではないのです。

胆嚢粘液嚢腫は胆嚢内で胆嚢壁から粘液が過剰に分泌され、胆嚢内に濃いゼラチン状の胆汁が蓄積されます。数週間から数ヶ月の間に粘度が上昇し、最終的には胆嚢の内腔全体を厚いゼラチン状の物質が占めるようになります。これを胆嚢粘液嚢腫と診断します。胆嚢の中は黒色のゼリーの様で弾力性があり、流れ出るというより絞りだすもしくはスプーンで掻きだし、剝がしとる感じです。

この疾患にかかるリスクを上げる要因として、下記が挙げられます。

・クッシング病(副腎皮質機能亢進症)の罹患:リスクが29倍になるという報告があります。
・甲状腺機能低下症
・炎症性腸疾患(IBD)
・シェットランド・シープドッグ(遺伝的要因)

〇症状

先ほども述べましたように、胆嚢粘液嚢腫の臨床症状は無症状のものから非特異的なものまで多く、健康診断等の腹部超音波検査で偶然発見されることもしばしばあります。特に挙げるとすれば、以下の様な症状が出ます。
元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、粘膜の黄疸、腹痛、腹部の張りなど。
症状が出た時には、既に緊急や重症のことがよくあります。

〇診断方法

胆嚢粘液嚢腫の診断は、身体検査と血液検査、そして腹部超音波検査の画像診断に頼って行われます。特に腹部超音波検査は、病気の初期段階で非常に有効です。そのため食欲不振や嘔吐などの症状が現れた時には、一度は腹部超音波検査をして胆嚢の検査をしておくことが大切です。胆嚢粘液嚢腫の症例ですでに重い症状で来院した子の多くは、こういった検査時にすでに胆嚢破裂を起こしています。早期発見により死亡のリスクを下げますので、定期検診を忘れずに行いましょう。

胆嚢粘液嚢腫1

胆嚢粘液嚢腫1


胆嚢粘液嚢腫2

胆嚢粘液嚢腫2

胆嚢粘液嚢腫が進行するとゼラチン状物質が胆管にまでおよび、胆管閉塞して生命の危険にさらされたり、胆嚢壁の炎症性変化により胆嚢が破裂して、胆汁内容物が腹部に流出することもあります。内科療法は常にリスクを背負って生きていかなければなりません。

〇治療方法

胆嚢粘液嚢腫の犬には第一に外科治療が推奨されます。超音波検査で発見されたら胆嚢摘出術を行うことが第一選択です。最近のデータでは、内科療法をしている犬より外科療法を実施したこの方が優位に長生きだったことと、内科療法をしていた犬も結果的に外科手術を受ける結果(胆嚢破裂、胆嚢炎など)になることが多いということです。こういった重篤な状態になったり、胆嚢が破裂するまで胆嚢摘出を遅らせることは、生命を脅かすことに他なりません。

特に無症状の胆嚢粘液嚢腫の胆嚢切除をすることはリスクを下げ、手術時間を短くし、さらに回復も早くなります。確かに他の外科手術と同様に全身麻酔にはリスクが伴うことはありますが、早期に手術を実施する方が麻酔のリスクを気にするより確実に治癒に近づきます。

 

〇予後

症状が重い状態で手術した動物は手術のリスクは高まりますが、手術後に合併症等なければ、長期間にわたり問題なく過ごせることが多いです。

胆泥症

腹部超音波検査をすると見られる、胆嚢内に通常の胆汁より白く描出される粘稠性の高い泥状のものを胆泥と呼びます。

胆泥症軽度

胆泥症軽度

胆泥症重度

胆泥症重度

胆泥症重度2

胆泥症重度2

重力方向にたまりますので、流動性があります。多くの場合臨床症状はともなわないことが多く、無処置の場合もあります。しかしながら肝臓の数値が高い動物、重力方向に動かなくなるなど粘稠性が増す場合は、胆嚢から胆汁の排出を活発にする薬や、肝臓の薬を飲むことで経過を見ていきます。同時に腹部超音波検査により、胆石、胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫などの可能性を診断することも大切です。

胆管閉塞(肝外)

一般に胆汁は肝臓から肝臓内の肝内胆管を通り、総胆管につながり、十二指腸に排出路があります。胆嚢は肝臓と総胆管の間にあり、空腹時は胆嚢の中に胆汁を蓄えておき、食餌をすると消化のために袋を絞り胆汁を総胆管から十二指腸に排出する機能があります。

この経路が胆嚢粘液嚢腫、胆嚢

胆嚢

胆嚢


や胆管腫瘍、胆石、
胆嚢結石

胆嚢結石


膵炎
膵炎

膵炎

膵炎2

膵炎2

膵炎3

膵炎3


、膵臓の腫瘍などにより閉塞して、胆汁が十二指腸に流れなくなることを胆管閉塞と呼びます。こうなると胆嚢は胆汁のうっ滞により拡張し、ひどいときには胆嚢や胆管の破裂を起こします。

〇症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹部痛、粘膜の黄疸などの症状が出ます。症状には個体差があり、食欲不振程度の症状の動物やショック状態のように虚脱する動物もいて様々です。

〇診断方法

血液生化学検査、尿検査、X線検査、腹部超音波検査等で閉塞を確認すること、そして閉塞の原因を特定することがもっとも大切です。

〇治療方法

胆管閉塞は閉塞の原因によって治療法は異なります。閉塞や狭窄が胆管や膵臓の炎症によるものなら、内科治療で落ち着いてしまう動物もいますが、胆石や腫瘍などによる閉塞の場合は早期に外科処置が必要です。外科治療の目的は閉塞の解除ですが、胆石がどうしても動かない、取り除けない、腫瘍があり再開通できない場合などはあらゆる手術方法を用いて、胆汁を腸に流す方法を考えて処置します。

〇予後

原因により様々です。腫瘍以外の症例では、内科療法、外科療法を含め一度症状が落ち着いて治癒してしまえば、通常の生活に戻れます。

胆嚢破裂

胆嚢破裂は胆嚢の閉塞などに続発して起こる疾患です。胆嚢がおなかの中で破裂することにより、胆汁成分の腹腔内への流出による胆汁性腹膜炎を生じます。特に胆石症、胆嚢粘液嚢腫を持病に持っている動物によく見られます。

〇症状

元気消失、食欲不振、嘔吐、腹痛、腹部膨満、発熱、黄疸など。

〇診断方法

血液生化学検査、尿検査を実施します。血液検査で肝臓の数値、血中ビリルビン値、白血球数、炎症反応(CRP)の上昇が見られます。また尿色も黄色になり、ビリルビン値の上昇が見られます。腹部超音波検査で胆嚢の破裂の所見を確認することや、腹膜炎の症状を見逃さないことが大切です。腹水が溜まっている場合は腹水を少量取り、胆汁漏出の診断をします。

胆嚢粘液嚢腫破裂

胆嚢粘液嚢腫破裂

〇治療方法

緊急の外科手術が必要です。夜間の場合は夜間救急での手術実施になることもあります。しかしながら、動物がどのような状態であるかがとても大切です。ショック状態でぐったりしている場合、手術はかえって危険です。動物の状態を手術できるところまで安定させて、手術開始になります。破裂した場所などにより手術方法は変わりますが、すべての状況に対応できるように準備して手術を行います。

〇予後

胆汁による腹膜炎が重度の場合は、予後が悪いことが多いです。腹膜炎は、感染なども含めて生存率を左右します。術後を乗り切ることができれば、通常の生活に戻れることが多いです。

ブログ 過去ブログ