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2009年03月01日

(論文)若齢期恥骨結合癒合術を実施した同腹犬5例

若齢期恥骨結合癒合術を実施した同腹犬5例

著者名:藤井康一、小林孝之、広瀬幸雄
学術雑誌名:獣医麻酔外科誌 Vol.40,No.1,1-6
発刊年月:2009年

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1、若齢期恥骨結合癒合術とは?
若齢犬の恥骨結合を電気メスで焼くことにより骨盤の腹側の成長を押さえ、寛骨臼を腹側に転回させ、寛骨臼が大腿骨頭をより覆うようにする手術。

2 、現状施術の実情
犬の股関節形成異常は、特に中大型犬に起こる先天的な股関節の形成異常により股関節の機能性が破綻して疼痛を伴う疾患である。本疾患に対する治療は、一般的に症状を発現した時点で行われる。

・運動制限、減量ならびに消炎鎮痛剤投与などで関節の疼痛を抑える方法
・骨盤三点骨切り術や股関節全配置換術などにより関節を形成する方法
・大腿骨の切除により偽関節を形成する方法
などが報告されている。

3、本研究の要約
股関節形成不全を持った同胎犬5頭に若齢期恥骨結合癒合術(JPS)を16週齢以前に実施。それら症例の術前および30週齢時にX 銭画像のPennHIPのDI値、背側寛骨臼白辺縁角(DARA)およびノルベルク角を計測して比較した。

4、本研究の経過
・症例の左右股関節のDI値は術後の30週齢時において明らかな減少は認められなかった。
・歳齢時に身体検査ならびにCT検査を実施したが、股関節に特記すべき異常は認められなかった。

5、本研究の結論
一般にJPS は、通常16週齢時にPenHIPのDI値測定により股関節形成異常を診断してから避妊または去勢手術とともに実施するが、成長の過程を考えるとより若齢時での手術が効果的であり、今回の研究で早期のJPSが安全かつ効果的に実施できる可能性が示された。


 

ひとこと
この若齢期恥骨結合癒合術はアメリカでは去勢避妊をする時にも行われる手術です。しかし日本ではこの手術を知らない先生も多く、多くの場合この先天性疾患を食い止めるのではなく、痛みが出たら、高額の治療や手術をする事に専念されてきました。この手術はわずか5分程度で終り結果が良好です。これをすれば将来の手術を防げる可能性は大です。 この手術が普及しない理由は16週齢という若い年齢で決断しなければいけないこと、日本にはPenHIP検査という認定資格を持っている先生が少なく、これを判定できない事などがあげられます。当院では疑わしい犬種や大型犬にはこの検査を勧めて将来の事を早くから予防することに心がけています。