藤井動物病院

診察・検査・治療

治療

適切な「診察と検査」により診断が下れば、通常、動物医療側としての判断としての治療は決まります。ただ、ここで考えなければいけないのは飼い主さんの考え方です。人間と違い、動物は辛い思いをして延命をしたり、治らない病気を一生懸命、病院に通わせ、治療したりすることが、必ずしも大切ではないという考えもあります。治療を医療側が一方的に決めるのではなく、飼い主さんの考え方、動物の年齢、将来性、我々の考え方などを検討して決めていくことが大事だということです。「インフォームドコンセント」という言葉を使うことがありますが、患者である動物たち自身が会話することはできないので、常に飼い主さんとその動物との関係、飼い主さんの考え方などを考慮する必要があると我々は考えています。

治療は「内科治療」と「外科治療」に分けられます。

内科治療

主に、「ホルモンの疾患」や、「臓器の機能不全」「感染症などの治療」は内科治療が主体となります。

外科治療

外科治療は「整形外科」と「軟部外科」に分けることができます。

整形外科
骨格、靭帯などの損傷の治療の手段となります。
軟部外科
主に腫瘍や悪性腫瘍(がん)に対する最大の手段になります。また内科では治療できなかった疾患の悪くなった部分を取り除くことで改善される場合に行われます。
低侵襲手術
低侵襲手術とは、一般的に腹腔鏡、関節鏡、胃カメラそして大腸鏡等を用いて、生体に対する外科侵襲を少なくして行う手術です。お腹を開けてしまえば、1週間の入院でも、低侵襲の手術なら24時間の入院で退院できるといった具合に違いが出ます。しかしながら、全身の麻酔時間が長引くというのも重要なマイナス要因ですので、全ての手術が適用なわけではありません。

また当院では全身麻酔を局所麻酔にして行う等を、CO2レーザーや凍結クリオサージェリーを利用して、行っています。これも低侵襲手術に入れることができます。

治しきること。当院が「外科治療」に力を注ぐわけ。

では当院の治療はどういうことをするかです。治療ですから、治らないと意味がありません。そのためには内科そして外科どちらにも最大限の力を入れています。機器もしかりですが、最も重要なことは機器のハードではなく、ソフトである、獣医師、看護師の能力です。

当院では、悪性腫瘍(がん)や老齢期の疾患に対して大きな武器となる、外科に力を入れています。これは内科の手を抜いていると言うのではなく、内科も最大限の治療ができる様にしながら、外科に関してはさらに力を注いでいるということです。大学病院から数名の外科の先生に来てもらい、チームとして手術をし、また最先端の技術を研修医に教えてもらってより良い技術を身につけてもらって日々外科の能力を高めています。この努力を20年近く行っているため、当院における外科の治癒率はかなり高いと自負しています。

また、さらなる、安全安心医療を目指し、手術方法の開発や改善をすることで数多くの発表を学会で行い、学会長賞、最優秀論文賞等、数多くの外科に関する発表で受賞しています。当院オリジナルの膝蓋骨内方脱臼の整復術の術式についての論文がアメリカの外科専門医雑誌に2013年8月に掲載されました。これも当院が動物の病態を、より良いものに改善をするために実施してきた、外科疾患に対する実績の証です。

外科手術のこだわり。3つの手術室。

当院では外科手術を3つの手術室に分けて行っております。その理由と各部屋の説明をいたします。

第一の手術室

手術室
手術室

まず、メインの手術室、第一の手術室です。避妊、去勢手術をはじめ、開腹手術をしたり、整形外科の手術をしたり、細菌が入り込まない様に手術をしないといけない場合に使用します。この部屋の環境は、ホコリやチリがたまる事がないように壁などに棚や荷物を置く場所はありません。換気は高性能へパフィルターを通した空気を常に手術室内で排出しており、手術室内は外部より空気が入り込めない陽圧に保たれている部屋になっています。これにより手術室側から常に風が外部に向かって出ている状態になりますから、ホコリなどが手術室に入ってこないようなります。

手術時の服装

また獣医師が手術室に入るときも診察をするときの服装からスクラブという外科専用の下着に着替えます。帽子、マスクも当然付けて入らないといけません。靴も履き替え、さらに手術室の前には、靴裏のゴミを吸着するシートを踏んで入ります。動物もこの部屋に入る前に、すべての毛刈りを終えてから移動します。この手術室は、我々が極力細菌を中に持ち込まないように努力している部屋です。殆どの手術はここで行われます。

診察時の服装
診察時の服装
手術用スクラブ
手術用スクラブ
手術時の服装
手術時の服装

第二の手術室

麻酔導入・内視鏡室 麻酔導入・内視鏡室
麻酔導入・内視鏡室

第二の手術室は、麻酔をし、胃カメラや直腸鏡の検査をするときに使う手術室です。どうして、胃カメラを普通の手術室で行ってはいけないのかと言うと、胃の中や腸のなかには沢山の細菌がいて、これらの手術をここで行うと、その後にお腹を開ける手術ができなくなってしまうからです。当院が手術中の感染がないのはこういった努力によるものです。ここは、麻酔の導入や毛刈りの時にも使われます。

第三の手術室

歯石室
歯石室

第三の手術室は、歯石処置専用の手術室です。歯石は細菌の巣窟と言われていて、我々も処置をするときにはしっかりと帽子とマスクを装着します。これは手術の時のマスクとは違い、我々が細菌を吸い込まない様にするために装着します。第一の手術室ではマスクは我々から細菌を出さないようにするための物でしたが、ここでは全く逆です。また、歯のレントゲンを撮らないと処置は出来ないことが多いので、レントゲンを漏らすことのないように、壁にすべて鉛を入れています。ここでレントゲンを撮り、その結果から、さらにCT検査など必要な場合には、その場で撮影し、病変部の歯の処置を行い、スケーリング(歯石除去)を実施して、2段階の研磨をして、歯を綺麗にしていきます。この部屋は特に細菌が飛び散るために、第一と第二の手術室とは階も変えています。

必ず3人の獣医師で手術

避妊手術、去勢手術は簡単な手術と感じている飼い主さんがいらっしゃるかもしれませんが、当院は、必ず3人以上の獣医師で手術をします。一人は術者、一人は手術助手そして麻酔医の3人です。避妊、去勢と言えども、どんな手術にも最低限の人数として3人の獣医師が参加します。当然のことながら術者、助手全てが、全身に無菌のガウンを着て行います。糸もすべて組織に吸収される素材のものを使用します。この糸は普通の糸よりも高価ですが、多少値段が高くとも、最も良いとされる糸を使うのは動物のことを考えてのことです。常にどんな医療に対しても最先端の治療法を用意するのが当院の役目です。

診察時の服装

高齢犬の手術を考える。

動物の高齢化が話題になることも多くなってきました。病気が診断されると、治療は決まりますが、考えられる治療は一つではありません。当院では、その状況に応じて、最善の治療を選択したいと考えています。若い年齢の動物なら、どんな治療も耐えられますが、老齢の動物や疾患を持った動物はそうではありません。その後の生活ができ、快適な生活を送ってもらうための最善の治療を考えて手術をするべきです。例えば、麻酔は30分ぐらいしかかけられない。手術をしないという治療も考えられるが、その選択肢では、その後の生活に課題が残る。そういった課題の中、どういった手術をするのかが、この治療の鍵を握ります。このように、当院ではあらゆる状況を考え、高齢犬の手術にも力を入れてきています。セカンドオピニオンでの来院も増えてきています。

当院での事例をあげて説明したいと思います。

症例1

症状

13歳の体重約20kgの犬が遊んでいる時に足を上げて、歩けなくなった。

検査結果

左後ろ足の股関節脱臼

飼い主さんの希望

年齢的にも犬に負担をかけたくないが、歩けないのは困る。

当院の診断

手術なしで脱臼を整復しても、再脱臼する事が殆ど。麻酔をかけるなら、手術をする事を勧める。
手術方法の提案を3つ。

手術法1
トグルピンによる完全整復処置、手術時間は45分程度、しっかりとした固定が得られ、回復も早い。
手術法2
股関節骨頭の切除術 手術時間は30分程度であるが、手術創は1よりは小さいが、それでも負担が掛かるのと、元の状態の整復ではない。
手術法3
テレビレントゲン下による整復とピン固定。手術時間は15分程度、傷は1センチ程度で筋肉を切ることもなく殆ど術後疼痛も軽度。

結果

手術法3のピンの打ち込み 術後レントゲン写真
手術法3のピンの打ち込みと術後レントゲン写真

3つの中から、年齢負担や状況を考慮して、飼い主さんとともに手術法3を選ぶ。手術は15分程度で終り、翌日から歩き出す。問題なく退院

症例2

14歳ゴールデンレトリバー
腋窩リンパ節が腫脹して、病理生検のためにリンパ節切除。局所麻酔とインテリジェント凝固システムのバイクランプを使用し止血する事で、処置は10分ほどで終る。

症例3

使用するクリオサージェリーの器具。クライオガン。
使用するクリオサージェリーの器具。クライオガン。

14歳雑種犬。耳の腫瘍を凍結手術で、処置する。処置時間は15分から30分程度、麻酔処置はせずに行う。疼痛を伴うときだけ、局所麻酔を使用。

凍結した腫瘍の写真
凍結した腫瘍の写真
処置中の写真
処置中の写真

考察(結論)

この様に、高齢の動物のことを考えないで単に手術する外科だけでなく、動物たちの生活の質を確実に改善しながら、そして治癒をさせる外科こそが、これからの老齢動物にはとても大切な事だと考えています。