藤井動物病院

藤井動物病院 公式ブログ

アメリカへ留学したわけ(4)

日本でも、獣医学の教科書にはSOAPのことが掲載されています。

ただ、そこに書かれているSOAPは、私が留学時に経験し、帰国後20年かけて習得してきたものとは全く違うものだと断言できます。仮に日本の教科書に書かれているSOAPを何十年もかけて経験を積み上げても、それは形式だけ繰り返したことになり、真にSOAPを習得したことにはならないのです。

経験だけでは大きな進歩や真の問題解決に至らないことは、日常の生活でもあります。例えば携帯電話。つい数年前までは、携帯電話といえば折りたたみの普通の電話でした。メールでのやりとりや、ケータイ小説など一部のコンテンツは観れましたが、やはり移動式携帯電話の領域を超えることはできませんでした。それでも、それまでは、日本は携帯電話先進国だったのです。

そんな時代に彗星のごとく現れたのがスマートフォンです。それは移動式携帯電話の領域を大きく超え、生活に密着しながら、日常生活の問題点を解決していく(アプリなど)、生活から手放せないものになっていきました。日本はこのイノベーションの蚊帳の外でした。なぜなら、成功したケータイ電話の考え方で経験を積み上げていただけだったからです。後にケータイ電話は、ガラケーと呼ばれるようになりました。ガラケー=ガラパゴス携帯、つまり日本でしか通用しても、世界には通用しない、いつのまにか日本はこの世界で孤島になっていたのです。

先に話をしたSOAPには同じことが言えます。日本のガラケーもスマートフォンも大きく括れば同じ携帯電話と捉えることができます。でも、それは全く似て非なるものであることは、周知の事実です。日本で従来語られているSOAPはガラパゴスなのです。その経験を積んでもガラバゴスのまま。本当に動物や飼い主さんのためになるものではありません。私が、米国留学時に経験をし、考え日本で実践してきたことは、まさにここで言うスマートフォンの世界です。同じSOAPと言っても、そこに至る考え方、プロセスが違うのです。

つまり、日本の獣医学において、培われた経験、教育、先入観などから形成される思考様式、価値観、そのものを変えていかないといけないのです。SOAPにおいても、その本質は何か、一体それが意味する所は何なのか?私がSOAPを通じて考えることは、それが動物や飼い主さんにおいて有効な思考方法であり、真のSOAPの思考、プロセスこそが、正しい治療を導いているということです。私が考えるSOAPは教科書やセミナーで覚えるものではありません。またそれを何年も覚えたからといって習得できるものではありません。動物に関する問題を経験則ではなく、常に変化する現場に応じ、アップデートし(スマートフォン同様)対応できる思考であり技術であり、能力です。私が言っている、経験主義ではない、問題指向型のSOAPとはまさにこのことなのです。

私が留学で経験したように、触診の大切さを感じ取り、そのベースにあるこのSOAPの思考を経験、習得することは、獣医師として一生をかけた技術になることを私は身を持って経験しましたし、それを継承、発展させることが獣医師のため、飼い主さんが愛する全ての動物のためと感じています。(つづく