藤井動物病院

藤井動物病院 公式ブログ

アメリカへ留学したわけ(2)

アメリカに行ってみると、当然英語はちんぷんかんぷんでしたが、授業には出させてもらいました。当時、通常日本から来ている獣医師の留学生は見学だけして1年ほど過ごして、帰って行きました。私の留学中にもそういう人が数人いました。

私の留学していたペンシルバニア大学は名門校の一つでアイビーリーグの学校であったために、あまり見学生を学校で受け入れてくれませんでした。当時のパターンとしては、英語学校に席を置いて、見学をするというだけの物で、勉強をするとは、ほど遠く感じました。私は腰を据えて学ばないと日本の良さをわからないと感じて、ペンシルバニア大学の獣医学校の学生に成れるように努力をしました。学部長と交渉をして、獣医学部の試験を受けさせてもらい学力が十分なら入学を認めてもらう事になり、そのかいあってか、念願が叶い晴れて獣医学校の学生になることができました。

ただ、その大学で感じたことは、日本の学生との大きな違いでした。それは、学生の勉強に対する姿勢です。学生は、平均年齢が、大学を出て3年働いた私とほぼ同じでしたし、勉学に対してはとてもまじめでした。わたしは、日本で既に臨床を3年間やっていたので、それなりの自信がありましたし、現実にはいろいろなところで、学生たちよりは技術的にも持っていました。それでも、その学生の真摯な学ぶ姿に刺激を受けずにはいられませんでした。学生は朝6時には学校に来ています。そして終った後、図書館に夜中の12時ぐらいまでいて学習していました。英語もままならない私は、最初の2年間で10キロ近く痩せました。

獣医学校の大学生になって、半年ぐらいして大学病院に出ることになったある日のこと、スタンダードプードルの症例が来院して、私が担当になりました。その犬は雄犬で、数ヶ月前から痩せてきたということで、大学病院に回ってきた症例だったのです。1学生として担当したのでありましたが、日本で既に3年間臨床をやっていましたし、学生にはもちろんの事、勉強ばかりやっている先生にも触診などでは負けたくないと思っていたくらいです。私は日本で、毎日80症例以上の診察をしていました。アメリカの先生はせいぜい1日に5〜10例ぐらいです。いくら私が若く経験が浅いといっても、触診の力はあると思っていました。

その症例の担当はDr.Littman 女性の40代後半の先生でした。私は「こんなおばさん先生に何がわかるのだろう」ぐらいに感じていました。今、思えば、大変生意気が学生だったと思います。

私は、問診、触診、聴診をひと通り行い、大きな異常は、最近痩せてきたという事だけで、血液検査、尿検査、胸部腹部のレントゲン検査、腹部超音波検査を提案して、Dr.Littmanに診察を依頼しました。しかし彼女は触診で、お腹の中のしこりを見つけ出しました。後腹膜腔という特殊な触りにくい場所にあるしこりでしたが、私は触診にはかなりの自信を持っていたので、大変ショックでした。自分の触診の甘さに何とも恥ずかしくそして悔しい思いをしました。これがきっかけで、この大学病院で1番の触診ができる人間になろうと決心したのです。

また、当時大学病院で最も尊敬されていた先生の中に、Dr.Washabawという、後に米国内科学会長になった先生がまだ30代で教鞭をとられていて、その先生が「問診、触診、聴診で診断の70%以上が決まると」学生に説いていました。それがいかに重要なことか、それを学んで帰ることが私の留学の最大の目標になりました。(つづく